薬の話


重篤な肝障害を起こす薬剤


副作用で、肝臓に悪い影響を及ぼす薬剤は 数多く存在します。なかには 劇症肝炎などの重篤な肝障害を引き起こし、死亡例が出ている薬剤もあります。
皮膚科で処方される「ラミシール錠」でも、外国で重篤な肝障害(肝不全、肝炎、胆汁うっ滞、黄疸 等)が報告されており、 死亡例もあります。


薬剤師 / 患者さん

:こんにちは。 今日は 水虫の 飲み薬が出ていますね。



<院外処方せん>

  ラミシール錠(125mg)   1錠
朝食後  14日分

 
  アスタット液 10ml
1日2回 患部塗布

:ええ。爪の中にいる菌は、飲み薬でないと 効かないと、先生に言われました。



:そうですね。これはラミシールという飲み薬です。従来の薬(グリセオフルビン)よりも、短い期間で治療できるそうです。
ところで、この薬の副作用などについて、先生から 何か お聞きになっていますか?


:ええ。肝臓に負担がかかるかもしれないと、言われました。
これからは、2ヵ月に1度は 血液検査をして、肝臓の働きをチェックしていくそうです。
血液検査をすれば、薬を飲んでいても 本当に大丈夫ですか?

ラミシール錠 塩酸テルビナフィン;
アリルアミン系抗真菌剤
アスタット液 ラノコナゾール;
イミダゾール系抗真菌剤

:ええ、もし薬で肝臓が悪くなると、必ず 血液検査の結果に現われてきます。ですから、異常値が出た段階で 早めに薬を中止すれば、また元どおり回復できます。もっとも、こうした副作用自体、めったに起きるものではありませんが。
ただ、ご自分でも 体調に注意された方が安心ですね。たとえば、熱があって ひじょうに体が気だるいとか、吐き気がするとか、なにか異常があれば すぐ受診された方がいいですね。

:実は、私は 他の病院で 1ヵ月に1回 血液検査を受けているんです。  ・・・これが、その検査結果です。
このデータの どこを見れば、肝臓の働きが分かりますか?


:そうですねぇ。 いろいろありますが、主に この GOT、GPT の項目に気をつけて下さい。 今は どちらも 20前後で 全く問題ありませんが、この値が 横に書いている標準値を越えて 増えていくようだと要注意ですね。その時は すぐ 主治医に連絡して下さい。

また、この1ヵ月ごとの血液検査結果は 皮膚科の先生にも 見せてください。先生も参考にされると思いますし、また新たに皮膚科で検査する必要がなくなるかもしれません。








GOT, GPT は どちらもアミノ酸の代謝に必要な酵素です。GOT, GPTは 肝臓にも多く存在するため、何らかの原因で肝臓の細胞に障害が出ると 、これらの酵素が 肝細胞から血液中に漏れ出し、血中濃度が高くなります。いいかえれば、GOT、GPTの値が高い時は、肝臓に障害があることが1因として疑われるのです。

重篤な肝障害といえば、糖尿病用薬のノスカール(一般名;トログリタゾン)による劇症肝炎で、死亡例が報告されたことは記憶に新しいところです。
死亡した患者さんは、当初 倦怠感と 尿の黄染を訴えて入院されました(発熱、発疹は無かったそうです)。
GOT,GPTの値は、トログリタゾン投与前は40以下だったのに対し、 入院時には ともに約 1000まで上昇していたようです。

肝障害の場合、大切なことは 早期に発見し、早期に薬物を中止することです。
しかし、血液検査をして早期に肝障害が発見できれば良いのですが、ノスカールの場合で「1ヵ月に1度、肝機能検査を行うこと」とされているのに対し、ラミシールの場合は「定期的に肝機能検査を行うこと」と警告の欄に記載されているだけで、どれくらいの頻度で検査するかは 医師の裁量に任されているようです。

この合間をうめるためには、血液検査に頼らない 、患者さん自身によるチェックが必要だと思います。
そのためには、肝障害が起き始めた場合の 自覚症状(初期症状)を患者さんに知らせておく必要があると思います。
薬物による肝障害と一口にいっても、発生機序には幾つかの種類があり、それによって初期症状の現われ方も違うようですが、一般的には発疹、発熱、、吐き気を伴う強い倦怠感、白目が黄色くなるなどの黄疸症状、尿の黄染(泡立ち易く、その泡まで黄色に染まる)等が、初期症状として現われるようです。

このような重篤な肝障害の発症例は ノスカールの場合で 約 2000人に1人の割合です。
その薬が何らかの 優れた特長を持っているかぎり、他で いくら重篤な副作用例が報告されていても、 処方は続けられることが多いと思います。
よって、できるだけ この重篤な副作用を早期に発見することからも、副作用の初期症状を患者さんに伝えておくことが大切だと思います。

薬の話 No.26/H 11.09.23)

追記;ノスカールは平成12年3月で販売中止されています。

<参考文献>
「重大な副作用回避のための服薬指導情報集(2)」 薬業時報社  p.61−63
「重大な副作用とそのモニタリング」 薬業時報社  p.51-58、 p.196-202
「調剤と情報 1998年 5月号」薬業時報社  p.14-20

(No. 26)
  
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