薬の話


処方薬の備蓄がない時


当薬局では1日平均 120枚ほどの処方箋を扱っています。そのほとんどが、近所の 複数の医院のものです。これら、近所にある医院の薬はすべて揃っていて、いつ患者さんが来られても大丈夫なようにしています。
しかし、患者さんの持参する処方箋は,周辺の医院のものだけとは限りません。
遠く離れた、複数の総合病院からも処方箋がファックスで送られてきます。患者さんの勤務先近くのクリニックのものもあります。また、ときには 数百キロはなれた帰省先での病院の処方箋などが持ち込まれることもあります。 そうした「範囲外」の病院からの処方せんが持ち込まれた時、備蓄が無くて 困ることがあります。
「範囲外」といっても、その患者さんが 2回目以降の来局であれば あらかじめ薬を準備してあるので 慌てることはありません。問題は はじめて来局された患者さんの場合です。
当薬局の備蓄は800ほどですが、初診(初めて来局)の患者さんの処方箋に 数種類の薬が並んでいると、その中に1つか2つ、備蓄の無い薬が入っているのが現状です。
備蓄が無い場合、近所の薬局で分譲してもらったり 、(小包装があれば)卸の急配を頼んだりしますが、揃わないことも多く、その場合は 車で1時間ほどの 隣市にある備蓄センターまで取りに行くことになります。

以下は、先日 経験した もっとも慌ただしかった1日の話です。


薬剤師 1 / 薬剤師 2 / 薬剤師 3

:FAXの処方せんが届きました。初診の患者さんです。デパケンR錠ですね。



1日8錠で90日分、 720錠ですね。 ・・・いま在庫は500錠しかないなぁ。急いで備蓄センターまで取りにいきますので、その間に この患者さんが薬をとりに来られたら、とりあえず今ある分だけ渡しておいて下さい。


薬剤師が、隣市にある備蓄センターまで薬を取りにいきました。
薬局は、その日はあいにく 患者さんも多く、残りの2人で調剤しましたが フルパワーの忙しさでした。
・・・と、1時間ほどたって また別の病院のファックスが入りました。こちらも初診の患者さんでした。


:ああ、また初診の患者さんですね。
アスベリン錠の10mgが出ていますね。うちには ちょうど無かったように思うなぁ。


:そうですねぇ。うちにはアスベリン散、ドライシロップ、シロップ、調剤用シロップの4種類は あるけど、錠剤はありませんね。
さんの携帯電話に連絡して、アスベリン錠も ついでに買ってきてもらいましょう。


備蓄センターに出かけた薬剤師 とうまく連絡がつき、アスベリン錠もいっしょに調達してくれる事になりました。

やがて、ようやく薬剤師 が、備蓄センターから戻ってきました。


:ただいま。道路が混んでいたので、時間がかかってしまいました。患者さんはまだ来てない?



:ええ、2人とも まだです。間に合って本当に良かった!


しかし喜んだのも つかの間、3回目のファックスが来ました。
3人はファックス機の前に 駆け寄りました。

:わぁ、また初診の患者さんだ!
放射線科ですね。トランサミンシロップとイソジンガーグル、アルロイドG・・・初めの2つはあるけど、アルロイドGは無いなぁ。


薬剤師 は、再び 備蓄センターへ 出かけました。




FAXに振り回される時、なにか歯車が うまくかみあっていないように感じます。
こうした調達から逃れるためには、いったいどれくらいの備蓄が必要なのでしょうか。

同じ成分の薬でも、メーカーの違いや ゾロ品も含めると 10種類以上の製品が出回っている場合も珍しくありません。
そのうえ、同じ 1つの薬をとっても、剤形や含有量の違いでさらに細かく分かれます。 とにかく、薬の種類が多すぎるのです。

でもこの調達も、無駄ではないはずです。当薬局の備蓄がそれだけ 増えることになるのですから。問題の解決は 1にも2にも 備蓄を増やすことだと思います。
・・・少しずつ、少しずつですが、当薬局も 備蓄が増えつつあります。

しかし、デッドストックなどの問題も考えると、1軒の薬局が備蓄できる量にも 限度があります。
今、複数の薬局をパソコンネットワークで結び、備蓄を共有しようと試みている地区もあるそうです。
1軒の薬局が備蓄できる数には限りがあります。しかし、近隣の薬局が協力し合い、備蓄を共有し合うことができれば、すぐに調達できる薬の数もぐ〜んと増えるでしょう。

これからは、こうした前向きの対応をしていかなければ、調剤薬局として存続するのも難しい時代かもしれません。

薬の話 No.25/H 11.08.29)


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