薬の話

NSAIDs と アスピリン喘息

アスピリンの内服により喘息発作が引き起こされる場合があり、これをアスピリン喘息とよんでいます。
このアスピリン喘息は、アスピリンだけでなく、他の
すべての 酸性非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)によっても起こり得ます。
当薬局にも、アスピリン喘息の既往がある患者さんが、1人おられます。
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薬剤師 |
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患者さん(74歳、男性) |
帯状疱疹の患者さんが、処方箋を持って来局されました。
急性期は脱したため、ゾビラックス(一般名アシクロビル;抗ウイルス剤)は、もう処方されていません。今は、その後の
神経痛治療をされているようです。
処方内容をコンピューターに入力するため、患者さんのデータを呼び出すと、備考欄に「アスピリン喘息」と入力されていました。
また、患者さんの薬歴簿の 個人情報欄 と 各ページの欄外には、それぞれ、アスピリン喘息と、赤字で 記載されていました。
<院外処方せん>
トリプタノール(10mg)
3錠 分3 毎食後
桂枝加苓朮附湯
7.5g 分3 毎食前
4日分
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:こんにちは。
この前と同じ薬ですね。
前回の薬を飲んでみて、問題なかったですか?
:ええ、私は喘息発作を起こすので 今まで痛み止めは飲めなかったのですが、このお薬だけは
、この前、別の薬剤師さんがおっしゃった通り 大丈夫でしたよ。
:アスピリン喘息ですね。承知しています。
この薬は、大丈夫なんですよ。
| トリプタノール |
一般名;塩酸アミトリプチリン
三環系抗うつ剤
適応外として、抗うつよりも低用量で、
神経痛治療に用いられる事がある |
| 桂枝加苓朮附湯 |
冷え、神経痛に用いられる |
実は その「大丈夫」が、信じられなかったんですよ。
私は以前、ある病院で 痛み止めを処方されたんです。
その時 私は、「アスピリン喘息があります」と伝えていたんですが、「この薬は大丈夫です。」と言って薬を渡されたんです。でも、そのときの薬で結局、呼吸困難を起こしてしまいました。
それ以後は、痛み止めが とても怖いんです。
今は、整形外科にも通っているんですが、痛み止めの薬は要らないと
断っています。電気治療だけにしてもらっています。
:それは大変な事でしたね。
:これは、どういう系統のお薬なんですか。
:もともとは、気分の沈んだ患者さんのためのお薬なんです。神経痛にも効果があるので
あなたの場合は そちらの効果を期待して 出されていると思います。それほど長くは飲み続けないと思いますが・・
:先生は、「漢方は しばらく続けるけれど、錠剤(トリプタノール)の方は
もうすぐ終わりにする」と言ってました。
痛みの方も だいぶ良くなりました。まだ雨降りの日などは、少し痛むような気がしますが・・・

患者さんが 初めて薬局に来られた時、これまでの副作用歴などをお聞きしていますが、もし
鎮痛剤やカゼ薬で副作用があった場合は、その副作用の種類についても 聞かなくては いけないと思います。
過敏症であれば、その薬剤、もしくは同系統の薬剤についてのみ気をつければ良いのですが、アスピリン喘息の副作用であれば、もっと広範囲に すべての酸性NSAIDs が関わってくるのです。つまり、副作用の種類によって、今後
気を付けなくてはいけない 薬剤の範囲も 全く違ってくるのです。
また、内服だけでなく、筋肉痛のローション(ケトプロフェン)や、炎症を抑える点眼薬(ジクロード)でも発作を起こした報告があり、投薬の際には
細心の注意が必要だと思います。
先日、近所の歯科医から、アスピリン喘息について
問合せの電話がありました。
「アスピリン喘息の患者がいるのだけれど、痛み止めは何が出せるか、具体的な名前を教えてもらいたい。」との
問合せでした。電話を受けた薬剤師は、返答に困ったそうです。
酸性NSAIDsは、シクロオキシゲナーゼを阻害し、これが アスピリン喘息の発生と密接に関係していると考えられています。
それに対し、シクロオキシゲナーゼを阻害しない塩基性NSAIDsは、比較的安全とされています。
しかし、アスピリン喘息の発生機序に まだ 不明な点もあるため、塩基性であっても安全とは言い切れない面もあるそうです。そのため、たとえ塩基性NSAIDsであっても、その添付文書には、安全を考えて
「アスピリン喘息禁忌」 と 記載されているのです。
塩基性なら大丈夫では?と思っても、その添付文書に「アスピリン喘息禁忌」と記載されている以上、実際
使用できないと思います。・・・歯科医には、そのような現状をお伝えしたそうです。
註)塩基性NSAIDsのうち、エモルファゾンだけは、アスピリン喘息禁忌ではありません。エモルファゾンは、「ペントイル」「セラピエース」「ベルルン」などの商品名で出ています。
ところで、先程の病院は、アスピリン喘息について 知らなかったのでは?と思いますが、実は 私自身も それに似た経験があるのです。
・・・自分がよく勉強して 知識も深い薬については、患者さんの訴えも
注意深く聞きとれるのに対し、あまり扱い慣れない、知識の浅い薬に対しては、患者さんが何か訴えても、「あまり重要な訴えではないのでは?」と、受け流すように考えてしまっているのです。
医療関係者にとって、「知らない」ことは 本当に怖いことだと感じます。
処方箋から 危険な 併用や投薬を見つけるのも、患者さんの言葉の
片隅から 副作用の兆候に気付くのも、 いかにその薬について知っているかにかかっていると思うのです。
しかし、数多い薬の情報全てを、正確に覚えることは
不可能だと思います
私の場合、「おや?」と感じて 立ち止まれるだけの知識があればいいと考えています。
患者さんの訴えに対して「もしかして、副作用?」とか、「これは、問題の処方では?」などと、気付く事さえ出来れば、あとは
不完全な記憶に頼らず、より正確な情報を得るために資料を開いて
調べればいいと思うのです。
しかし、気付くだけの知識もなければ、危険な兆候も見過ごして、通り過ぎてしまうでしょう。
できるだけ この見過ごしを防ぐためには、勉強は欠かせないと思います。
(薬の話 No.22/H 11.07.06)