薬の話


抗結核薬 の 副作用


ビタミンB6 と構造がよく似ている抗結核薬のイソニアジドは、ビタミンB6の拮抗物質として知られており、その結果生じるビタミンB6欠乏による末梢神経障害が 副作用として報告されています。
よってイソニアジドの場合は、不足しているビタミンB6を補うことにより、副作用の末梢神経障害は予防できます。

しかし先日、イソニアジドが処方されていないにもかかわらず、ビタミンB6 が出されていた処方せんが、ファックスで送られてきました。


薬剤師 A
薬剤師 B


:処方せんのファックスが届きました。
・・・結核の患者さんですね。



:きょう初めての患者さんですね。


イソニアジドが処方されていないにもかかわらず、ピロミジン(ビタミンB6) が出されていた処方せん
エブトール(250mg)
4錠 分1 朝食後

リマクタン(150mg)
3cap 分1 朝食前

クラビット(100mg)
2錠 分1 朝食後

メチコバール(500μg)
3錠 分3 毎食後

ピロミジン(20mg)
3錠 分3 毎食後
14日分


:おや? この ピロミジン(一般名ピリドキサール;ビタミンB6)は、何の目的で出ているのでしょう。



:さあ? エブトール(一般名 エタンブトール;抗結核薬)の、末梢神経障害の予防でしょうか?


でもエブトールの末梢神経障害は、イソニアジドと違って、ビタミンB6不足から来ているわけではないですよね。いくらビタミンを補っても 、この場合は無意味じゃないのかなぁ。



でも、もしかするとエブトールの末梢神経障害にも、ビタミンB6が効くのかもしれないですよ。



そうですねぇ・・・



ビタミンB6 は 、イソニアジドだけでなくエタンブトールの末梢神経障害にも有効かもしれない・・・
半信半疑ながらも、そんな 淡い期待をもちながら、患者さんを待ちました。 :


                 




やがて、先ほどの患者さんが薬を取りに来られました。そこで ビタミンB6 について直接 患者さんから聞くことができました。
しかし、その回答は意外なものでした・・・


薬剤師
患者さん(女性、75歳)
<院外処方せん>

エブトール(250mg)
4錠 分1 朝食後

リマクタン(150mg)
3cap 分1 朝食前

クラビット(100mg)
2錠 分1 朝食後

メチコバール(500μg)
3錠 分3 毎食後

ピロミジン(20mg)
3錠 分3 毎食後

14日分

こんにちは。お薬はもう出来ています。今日が最初なので、お薬の説明をしますね。
これはエブトール(一般名 エタンブトール;抗結核薬)という、結核のお薬です。4錠をまとめて 朝食後に飲んで下さい。



:4錠とも、朝に飲むんですね。


:ええ、結核のお薬は、とにかく飲み忘れなく続けることが大切なんです。1日4回に分けて飲むよりは、1回にまとめた方が飲み忘れが少ないので、今は「まとめて飲む」飲み方が一般的です。効果の方は、まとめて飲んでも、分服しても、同じだそうですよ。ところで、エブトールの副作用については、先生から何か聞かれていますか。

はい、少し目が悪くなるかもしれないと聞いています。先生からは、毎朝、新聞を片目ずつで読んで、視力をチェックするように言われていますが。


そうですね。そうした視力チェックをして、何かおかしいと感じたらすぐ先生に報告して下さい。
ただ、こうした副作用はあまり起きないことですし、たとえ起きても 、今言ったような視力チェックで早期に発見できればまた元どおり回復します。だから、安心してお薬を飲んで下さい。それよりも、副作用を恐れて 飲んだり飲まなかったり・・中途半端にしていると、耐性菌ができてお薬が効かなくなってしまいます。むしろ、そちらの方が怖いんですよ。

わかりました。
残りの薬も結核の薬ですか?


このリマクタン(一般名リファンピシン;抗結核薬)と、クラビット(一般名レボフロキサシン;ニューキノロン系抗菌剤)は、おそらく 結核の薬として出されていると思います。



ようやく、ピロミジンについて尋ねる時がきました。



ところで、このピロミジン(一般名ピリドキサール;ビタミンB6)については、何かお聞きになっていますか。




:ああ、それだったら、今まで飲んでいた薬・・ たしかイスコチン(イソニアジド)だったかな・・で副作用が出てから、ずっと飲んでいます。



えっ! イスコチンも飲まれていたんですか ?




:はい、でも副作用が出てしまって、薬は中止になりました。まだ、しびれ感が少し残っているので、このピロミジンだけは ひき続き飲むようにと、先生から言われています。



なるほど・・・それでピロミジンだけが出されていたんですね。




実はこれは4ヶ月前の話です。患者さんもあれから少しずつ回復し、それに伴いピロミジンの量も徐々に減らされていきました。そして4ヶ月たった現在では 、ピロミジンも中止になっています。
今のところ新たな副作用も無く、病気の方も順調に回復しているようです.








エタンブトールの副作用として、視神経炎や末梢神経障害が知られています。

視神経は末梢神経と違って、いったん萎縮や変性を起こすともう 再生されません。よって、その前段階でくいとめること、つまり (視力チェックなどによる)早期発見がとても大切です。

しかし、あまりに副作用を強調し過ぎると、今度は患者さんが 副作用を恐れて薬をあまり飲まなくなってしまいます。中途半端な飲み方をしていると、 今度は「耐性菌の出現」という怖い事態を招くかもしれません。
結核患者さんの服薬指導はこのような点で難しく、特に慎重に行わなくてはいけないと思います。

なお、視神経障害にはヒドロキソコバラミンが回復を早めるという報告もあり、上記の患者さんの場合、メチコバールが その目的で出されているものと思います。


薬の話 No.16/H 11.03.10)

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