2005.10.31-2006.10.30




東野圭吾『白夜行』集英社 2002.5
「ねえ、夏美ちゃん。一日のうちには太陽の出ている時と沈んでいる時があるわよね。それと同じように、人生にも昼と夜がある。もちろん実際の太陽みたいに、定期的に日没と日の出が訪れるわけじゃない。人によっては、太陽がいっぱいの中を生き続けられる人がいる。ずっと真暗な深夜を生きていかなきゃならない人もいる。で、人は何を怖がるかというと、それまで出ていた太陽が沈んでしまうこと。自分が浴びている光が消えることを、すごく恐れてしまうわけ。今の夏美ちゃんがまったくそうよね。」
「あたしの上には太陽なんかなかった。いつも夜。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。太陽ほど明るくはないけれど、あたしには十分だった。あたしはその光によって、夜を昼と思って生きてくることができたの。わかるわね。あたしには最初から太陽なんかなかった。だから失う恐怖もないの」p.826)


2006.1.18 14:40 東証、全銘柄売買停止

「いざというときにダンスのひとつでもできるヤツが生き残っていく K・S」

有島武郎『小さき者へ・生れ出づる悩み』新潮社 1955.1
『小さき者へ』
「死が総てを圧倒した。そして死が総てを救った。」(p.17)
「世の中の人が無頓着だといってそれを恥じてはならない。それは恥ずべきことじゃない。私たちはそのありがちの事柄の中からも人生の淋しさに深くぶつかってみることが出来る。小さなことが小さなことでない。大きなことが大きなことでない。それは心一つだ。」(p.19)
「深夜の沈黙は私を厳粛にする。」(p.22)
『生れ出づる悩み』
「作者の鋭敏な色感が存分に窺われた。そればかりか、その画が与える全体の効果にもしっかりと纏まった気分が行き渡っていた。悒鬱−十六七の少年には哺めそうもない重い悒鬱を、見る者は直ぐ感ずる事が出来た。」(p.29)
「世の中を見渡すと、何百万、何千万の人々が、こんな生活にその天授の特異な力を踏みしだかれて、空しく墳墓の草となってしまったろう。それは全く悲しい事だ。そして不条理な事だ。然し誰がこの不条理な世相に非難の石を抛つ事が出来るだろう。これは悲しくも私達の一人々々が肩の上に背負わなければならない不条理だ。特異な力を埋め尽くしてまでも、当面の生活に没頭しなければならない人々に対して、私達は尊敬に近い同情をすら捧げねばならぬ悲しい人生の事実だ。あるがままの実相だ。」(pp.45-46)
「雪も風も波も君達を考えにいれてはいないのに、君達は強いてもそれらに君達を考えさせようとした。」(p.62)
「丁度親しい心と心とが出遇った時に、互に感ぜられるような温かい涙ぐましさが、君の雄々しい胸の中に湧き上って来た。自然は生きている。そして人間以上に強く高い感情を持っている。」(p.89)
「朝の山には朝の命が、昼の山には昼の命があった。」(pp.91-92)
「星は語らない。」(p.99)
「そして僕は、同時に、この地球の上のそこここに君と同じい疑いと悩みとを持って苦しんでいる人々の上に最上の道が開けよかしと祈るものだ。」(pp.103-104)