源氏物語絵巻

[柏木] 第三段

 源氏の邸では、女三宮から生まれ、健やかに育つ薫の五十日の祝いが行なわれている。わが子ならぬ子を、父として抱く源氏の姿。義母藤壺宮とのぬぐいされない過去のあやまちの報いかと、因果応報に恐れおののく源氏。吹抜屋台という屋根を取り除いて室内を俯瞰する描法で、画面を斜めに二分し、主人公たちを凝縮した世界におく。祝膳の朱色と女房たちの正装姿の華やかな色彩が、源氏の孤独感を強調する。「源氏物語」全編をつらぬく宿命の主題がもっとも表出した劇的画面である。

信貴山縁起絵巻

[飛倉の巻]

 信貴山に籠って奇跡を行った命蓮にまつわる3つの説話を描く。山崎長者の米倉を乗せた金色の鉢が舞い上がり、川を渡って飛んで行く。慌てふためく人々と、馬で追いかけようとする長者の姿。托鉢のために空を飛んできた命蓮の鉢を長者が米倉に入れたまま忘れてしまったのが事件の起こりであった。