法隆寺の住まい


《3つのコート 回遊する空間》

この住まいは法隆寺の松並木の参道に近く、北側に隣接する住戸により法隆寺は望めませ
んが、鐘の音も間近に聴かれ、歴史的な景観の中に位置しています。広域的には緩く南に
傾斜した地形にあり、南と西には田畑が広がり、眺望にも恵まれた環境です。
しかしながら、南側の水田越しの道が藤ノ木古墳へ至る道ともあって、休日には多くの観
光客が通りを行き来するため、南側からのプライバシーを確保する事が望まれました。同
時に、家族の共用室は大らかに広く、かつ、豊かな天井高さを持つ事が要求されました。
このような条件のなかで、敷地の中に性格の異なる3つの庭を分散して配置し、プライバ
シーを確保しつつ、内外の空間が一体的となって拡がる住まいを構想し、動線は様々に回
遊するよう計画しています。

開放的に設けられた玄関部分のエントランスコートは駐車スペースも一体的に整備して人
を迎え入れる住まいの顔としています。
屋外のリビングとして居間・食堂に囲われたリビングコートは、南側に平屋のバス・トイ
レゾーンをウイング状に設ける事により、日照を損なうことなくプライバシーを得ていま
す。リビングコートの西側は外壁と一体的に設けられた低い塀で限定され、背後の景観に
いっそうの奥行きを与えています。アイランド状に設けられたオープンなキッチンからは、
住まいの拡がりの全貌を見渡せると共に、食堂、そしてこのリビングコート越しに、遥か
西の田畑・山並みへと視線が広がっていきます。
このキッチンと背後につながる家事コーナーの南側には屋根付きのサーヴィスコートが設
けられ、良好な採光通風を与えるとともに、生活を支えるサーヴィス機能を充実させてい
ます。

プライバシーに配慮して奥まった形で設けられたダイニング南側の窓と、サーヴィスコー
トとの間のらせん階段は、2階の個室ゾーンへとつながり、一方、リビングに設けられた
階段はリビング上部の吹抜に面した家族共用の読書スペースにつながります。これらの2
箇所の階段により内部動線に回遊性を生み出しているのと同様に、キッチン・サーヴィス
周り・勝手口にも回遊式の動線を設け、生活空間に変化あるつながりと利便性をもたらし
ています。

外観は、法隆寺に接する地区として、落ち着いた濃灰色の外壁と、大小の瓦葺の切妻屋根
が輻輳して重なる形態としてリズムを創り出し、景観への調和を図ると共にその存在をさ
りげなく主張しています。


建築概要
建築場所    奈良県生駒郡斑鳩町
敷地面積    292.11u
建築面積    97.43u
延床面積    156.69u
規模構造    木造在来工法 2階建
設計期間    2001年05月〜2002年05月
工事期間    2002年07月〜2002年12月
設計監理    木村哲矢建築計画事務所
施  工    山本建築
        今村住設株式会社
撮  影    平井美行写真事務所


リビングコート夕景 居間の吹抜と畳の間
リビングコート夕景 居間の吹抜と畳の間
食堂・台所 右手にリビングコート 食堂から居間を見る
食堂・台所 右手にリビングコート 食堂から居間を見る
居間から食堂・リビングコートを見る 2階家族の書斎から居間吹抜を見る
居間から食堂・リビングコートを見る
まだ植栽前で少々寂しいリビングコート
2階家族の書斎から居間吹抜を見る


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