会報2011年6月

 

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 東日本大震災で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
 3月11日の地震発生から3ヶ月がたった今も、9万人を超える人々が避難生活を余儀なくされているのに、中央では大義なき政争が続いています。「自制心の強い国民」がそれを許しているということでしょうか。
 今や「ヒロシマ・ナガサキ」に加えて「フクシマ」が世界共通語になってしまいました。世界最初の核被害国が、あろうことか世界最悪の原発事故を起して世界中に放射能を撒き散らしています。こうした事態を止められなかった無念さを、反原発運動を続けてきた人たちが最も強く感じていると思います。隠されていた情報が少しずつ明らかになるにつれ、「戦争・戦後責任」問題、「ミナマタ」に通じる私たちの社会の無責任体質に思い至ります。
 会報NO.7でお知らせしました興隆県教育局幹部の訪日希望は今に至るまで実現していません。その後尖閣列島(魚釣島)問題が起きてますます難しくなったものと思われます。しかし、3月11日の大震災が伝えられると、すぐに教育局と前教育局長の劉さんから関係者の安否を尋ねる伝言が届きました。世話人や興隆を訪問したメンバーは皆無事であることを伝えていただきました。昨年私たちが訪問した時に、2011年は興隆県と県教育局は多忙の年になることが分かりましたから、今年は興隆訪問の旅は企画していません。替わって例年5月か6月に開催している「平和教育研究交流会議」を8月に実施することにしました。今号ではそのご案内をお届けします。

 

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第14回 平和教育研究交流会議 ご案内

  • 日 時  2011年 8月20日(土)〜21日(日)
  • 場 所  中帰連平和記念館  埼玉県川越市笠幡
  • 日程   8月20日(土)13:30開会
    • 第1部 14:00〜17:00
      テーマ  東アジアに対する日本の<まなざし>の過去そして現在
      〜「熱河伝道」と「毒ギョーザ」問題を事例に考える〜
      問題提起;張宏波さん(明治学院大学教員)、石田隆至さん(明治学院大学平和研究所研究員)
    • 第2部 18:00〜21:00
       テーマ  (仮)福島で起こっていることとこれから
       講師;伴英幸さん(原子力資料情報室共同代表)
    • 第3部  8月21日(日) 9:00〜12:00   実践交流と討論


    第14回平和教育研究交流会議 講師プロフィルなど

    張宏波(ちゃんほんぼ)さん
    一橋大学大学院を経て、明治学院大学教員・同大学国際平和研究所所員。専攻は日中関係史。
    当会の2007年の第11回興隆の旅に同行し、「熱河伝道」についての調査をすすめた。主な著作などは

    張宏波「日本の戦争責任と繰り返される“曖昧な解決”」『人権と教育』(障害者の教育権を実現する会)51号、
    共著『中国侵略の証言者たち:認罪の記録を読む』岩波新書、2010年
    共著「日本のキリスト教と植民地伝道:旧満州“熱河宣教”の語られ方」『PRIME』(明治学院大学国際平和研究所)31号、

     

    石田隆至(いしだりゅうじ)さん
    一橋大学大学院を経て、明治学院大学国際平和研究所研究員。専攻は平和運動論。
    2006年以降、日本の戦争責任認識の「歪み」を明らかにするため中国帰還戦犯への聞き取りや、花岡「和解」問題に関する調査研究を進めている。おもな著作:

    「寛大さへの応答から戦争責任へ――ある元兵士の“終わりなき認罪”をめぐって」『PRIME』31号、
    張宏波・石田隆至の共著「加害の語りと日中戦後和解―被害者が受け入れる反省とは何か―」『PRIME』30号、
    「東アジアの戦後和解は何に躓いてきたか?−−“全面解決”における“謝罪”について 」『戦争責任研究』66号、

                                

     伴 英幸(ばん ひでゆき)さん
     1951年三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。
    1979年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、原子力へ
    の関心を高め、消費生活協同組合の専従として働く傍ら、脱原
    発の市民運動などに関わる。1990年より原子力資料情報室のス
    タッフとなる。 主な著作は
    『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
    共同執筆『原子力市民年鑑』(七つ森書館、1996年〜毎年刊行)
                                 
    なぜ脱原発か (CNIC)ホームページから
    @核兵器の製造・使用につながる危険性
    A大事故の危険性
    B日常的な放射線被ばくの危険性
    C放射能のゴミを後世に残すことになる危険性
    D「電気が止まったら何も出来なくなる社会」を作り上げてしまう危険性

    原子力資料情報室はこう考えます     
    【原発は早急に廃止されるべきです】
    放射能災害の危険性、放射性廃棄物のあと始末のやっかいさ、核兵器への転用のおそれ……。多くの問題を抱えた原発の廃止は、できるだけ早く実施される必要があります。原発のある地域や原子力産業の労働者の暮らしなども視野に入れ、脱原発の具体策を考えます。以下略
     NPO法人原子力資料情報室(CNIC)ホームページから
     1985年から1998年まで代表を務めた高木仁三郎氏は1997年ライフ・ライブリッド賞を受賞

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ドクメンタリー映画 
「かすかな光へ―大田堯 生命のきずなへの道程」

監督:森康行 音楽:林光 詩朗読:谷川俊太郎
製作:ひとなるグループ

森監督は夜間中学の記録映画『こんばんは』で2003/第1回文化庁映画賞、文化記録映画大賞を受賞しています。
 題名の『かすかな光へ』は谷川俊太郎氏の同名の詩により、朗読も詩人自ら行っているとのことです。いただいた資料の中から、以下に作品の製作意図と作品解説を一部抜粋して紹介します。
 [〜いま、伝えたい 生命のきずな〜 戦前戦後を通して日本の社会と人間を見つめ、教育のあり方を問いつづけてきた教育研究者大田堯。さまざまな生活現場に生きる人たちとふれあう中ですすめてきた大田堯の教育研究は、「教え育てる」 という既成の教育観を根底から覆すものである。生きるとはどういうことか。なぜ学ぶのか。学校教育にとどまらず、人生を生きぬく条理を探求する。教育を通じて人間を見つめつづけてきた大田堯の思索と実践の軌跡を映し出す。]

 [戦前戦後を通じて、日本の社会と人間の肌にふれ、今年93歳を越えた教育研究者大田堯。東京帝国大学の大学院生から、一兵卒として招集された戦争体験。そこで待っていたのは36時間の生と死が交錯する漂流、生きる力を試されたジャングル生活。生活に根ざした知恵と力を身につけた農民兵、漁民兵などの労働者との出会い。「教育によって愚劣」になった知的エリート。植樹の知識から実生(みしょう)の知恵への再生を願望。ここから人間にとって「教育」とは何かの終生に及ぶ問いかけが始まる。] [いま人生の最終段階で、法の「想定外」の重い障がい者が自ら好んで社会的に価値あるものを創り出す福祉施設「川口太陽の家」と出会う。そこで思春期を過ぎた障がい者が、感性、心と心のひびき合いの中で一人の労働者として生きる協同の姿にふれる。][その施設の北東には、人口200万の都市社会の只中に1260ha.の広大な緑地がある。そこをフィールド・ミュージアムとして保存、活用、そこでの新しい人間関係の創造へとつなげる。その憧れは、ヒトのおごり、マネーや科学・技術の成果など、無機的なものへの過信を抑えて、自然の摂理にそうた“命あるもののきずな”の再生へと向かう]

2006年9月 北京を訪問された大田先生は、私たちの興隆
訪問にも合流し興隆第一小学校の子ども図書館(大田図書館)
を再訪されました。そのとき大田先生に同行して興隆にも入
ったのがこの映画を作った森康行監督と西島房宏カメラマン
でした。少なくともそのときから5年の時間をかけて丁寧に作り上げたドキュメンタリー映画ですから楽しみです。

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事務局から

  •  2000年と2004年興隆訪問に際して、北京でお目にかかった黄華さん(日中平和友好条約調印の時の外交部長)が2010年年11月24日亡くなられました。当会の活動に深い関心を寄せられ、来日の際にはわざわざ時間をとって私たちと歓談することを希望される方でした。弔意を表すためご自宅へお花を届けました。
  • 11月21日は 仁木ふみ子著『ある戦後―中国と日本のはざまを生きる』の出版を祝う会でした。各地各界からの参加者に加え、中国大使館からも見え、上海から教え子が駆けつけるなど日中の架け橋となっている仁木さんの会にふさわしい和やかな会でした。今、仁木さんは、中帰連平和記念館館長として被災地の子どもたちに本を贈ろうと奔走しています。
  • 今井清一さんは『史料集関東大震災下の中国人虐殺事件』(仁木ふみ子編)を監修されましたが、庶民の目線で歴史を研究し叙述し、『横浜の関東大震災』『大空襲5月29日』など横浜に関わる研究や著作も多くあります。この度横浜の市民団体横浜文芸懇話会から「横浜文学賞」を贈られました。 “市民からの賞なのでいただきました”とおっしゃいます。
  • Hさんから詩集『わたしたちは何者なのか』をご寄贈いただきました。一緒に「想像132号」と「東日本大震災・原発大事故臨時号」をいただきました。ここにも、反原発を叫び続けてきた人の無念が読み取れます。
  • 今年は教育基本法が改悪されてから初めて全国の中学校の教科書採択が行われる年です。「つくる会」は分裂し、「自由社」「育鵬社」の「歴史」と「公民」の教科書も検定を通り、採択の対象になります。右派の政治組織日本会議の指令によって、各地の議会に2社の教科書を採択するよう教育委員会に圧力をかける決議案が出され、幾つかの議会では可決されています。教科書ネットの分析に寄れば、彼らのやり方は政治的圧力によって教育委員会の多数派を獲得し、無記名投票によって採択を狙う(一昨年横浜市で成功したやり方)とのこと。この8月までが山場と思われます。
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