会報2008年春

 

CONTENTS

 

第11回平和教育交流会議 ご案内

『横浜の関東大震災』有隣堂を読んで

南京事件70周年式典に参加して

会員からメッセージ

事務局から

 

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<日中関係というとき>


 「中国はオリンピックをやれるの?」と市井の人々が口にします。ある人は心配げに、ある人は不信をあらわにして。新年早々殺虫剤入り餃子をめぐって、日本中が震撼し、3月以来チベットでの軍隊が出動した騒乱。いずれも事の真相は明らかではなく、上記のような問いかけの背景には、侵略者日本と被害者中国人民の真の和解が実現していないという事実があります。何かあれば相互不信が吹き出してきます。昨年は日本の中国への全面侵略開始から70年、様々な記念行事が行われました。今年は日中平和友好条約締結から30年、5月には胡錦涛主席の来日も決まりました。
 第11回平和教育研究交流会議では日中関係にかかわる二つの講演を企画しました。

 昨年行われた様々な記念行事の中で、南京大虐殺をめぐる連続国際シンポジウムはその最大のものでした。シンポジストとして参加された笠原先生がお話してくださることになりました。

 

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第11回平和教育交流会議 ご案内

<とき> 2008年5月31日(土)13:30
〜  6月1日(日)12:00
<ところ>  東京 総評会館           
<参加費>  2000 円  学生半額 
<内容>
第1部 5月31日 14:00〜
 講演 笠原十九司さん(都留文科大学教授)
「南京事件をめぐる記憶と対話
―連続国際シンポジウムに参加して」   
第2部 18:00〜
 参加者情報交換・実践交流    
 職場、地域での情報、取り組みをお持ち下さい
 特別報告:たたかう社会科教師・Mさん
―憲法に基づいて教えたら分限免職!

第3部  6月1日 9:00〜
講演 今井清一さん(横浜市立大学名誉教授)
 「小村寿太郎家の系図からー日中関係のこれまでの研究を考える」
<申し込み>
 別紙申込書にて事務局宛お申し込み下さい。

  笠原十九司さん  プロフィル



宇都宮大学教授20年を経て1999年より現職。
専門は中国近現代史、日中関係史、東アジア太平洋国際関係史。主な著書:『アジアの中の日本軍』(大月書店)、『南京事件』(岩波新書)、『南京事件と三光作戦』(大月書店)、『南京難民区の百日』(岩波現代文庫)、『南京事件論争史』(平凡社新書)、『笠原十九司歌集 同時代』(本阿弥書店)『「百人斬り競争」と南京軍事裁判』(大月書店より近刊)

 お住まいの甲府盆地から見える甲斐の山々の全登頂を目指している。既に山梨百名山のうち31を踏破、生涯をかけて挑戦してゆくおつもりです。

今井清一さん プロフィル



最初からの当会世話人。長く空襲を記録する運動に参加、穏やかな酒好きとはご本人の弁。主な著書は『昭和史(新版)』(岩波書店) 『日本の百年6震災にゆらぐ』(ちくま学芸文庫)『日本近代史U』(岩波書店) 『開戦前夜の近衛内閣ー満鉄「東京時事資料月報」の尾崎秀実政治情勢報告』(青木書店) 『新版大空襲5月29日ー第二次大戦と横浜』(有隣堂)『横浜の関東大震災』(有隣堂)

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『横浜の関東大震災』 有隣堂 今井清一著 を読んで


 昨2007年9月に出されたこの本には、表裏見返し、トビラ、そして文中の随所に地図が出てきます。特に〔第二章横浜港・関内と山手の罹災〕〔第三章野毛、戸部から神奈川、鶴見の罹災〕〔第四章関外とその周辺の罹災〕の各トビラには大正時代の番地入りの地図が大きく入って目を引きます。
その地図の町名や川筋の橋の名、山や丘への坂の名、そしてその地その地の被災写真の数々に助けられながら、この3つの章で読者は1923年9月1日正午1分前からの「横浜」を体験させられることになります。どんな揺れの中で建物や地面がどうなり、火がどうまわり、そこにいた人々がどのような状態で命を落とし、どのような中で生き延びることができたのか…、映像などから受けるドキドキ感とは違う、揺れや火の風の感覚、ぎりぎりのところで発露される善意と勇気、命拾いの安堵感、その後の飢餓感や不安感までがまるで自分がその場にいるように実感させられます。横浜港内の船にいた沖人夫の手記から始まり、それぞれの場所での数々の遭難体験記がその息遣いのままに活かされているからなのでしょう。地図を配して、当時の人々の直面した状況が地形や道路筋の描写の中に溶け込むことで更に現実味を帯びて迫ってくるのでしょう。

 〔第六章横浜の流言と虐殺〕は各章の中で一番ページを割いています。横浜各地で働く朝鮮人や中国人の人たちの姿はこの章にくるまでに機会あるごとに描かれ、著者のやさしい眼差しが注がれています。ここでは、横浜が発生地の一つとなった朝鮮人暴動の流言が広がった原因のいろいろな説を紹介して、一つひとつ史料の裏付けをもとに考察し、警察の動きと戒厳令、軍隊の出動、現地の人たちの対応を追っています。〔第七章海からの救援と戒厳警備隊の到着〕では、県外や国外からの救援のスケールの大きさに驚きましたが、折角来てくれたソ連の救援船を日本政府は追い返してしまいます。治安維持のためとして被災者を二の次にしたのでした。流言を生み出す背景と同じでした。〔第五章〕〔第八章〕にも救援よりも統制に傾く軍隊や為政者の姿があります。
そして、関東大震災の被災地はその22年後の戦災・空襲の被害状況と二重写しになって語られます。
 〔第一章〕では東京の下町が、最後の〔第八章〕では横浜市の中心部が焼夷弾空襲の目標地点になって震災時と同じに焼き払われたことが出てきます。各地の「戦災・空襲を記録する会」の推進力だった著者の、あふれる思いの詰まった本でした。

 この本は、地図や遭難記だけではなくすべてが史料をもとに構成されています。散在する貴重な史料を掘り起こし、丹念に光を当てていく作業の積み重ねによって、関東大震災の東京を中心にした記憶の中に横浜を加えました。ほとんどを記録史料に語らせながら、さりげなく大きなメッセージを発しているこの「むそい」本を仲間と読みあい、災害対策基本法や国民保護法等も合わせ考えたいと思いました。

 今秋には、今井清一監修、仁木ふみ子編集の『史料集―関東大震災下の中国人虐殺事件』もいよいよ刊行とのこと。今井先生ならではの史料のご精査ぶりが拝見できますね。そして来る6月1日の集会では、また今井先生の今一番ホットなご研究を知ることができるとのことで、これも今から楽しみです。 山形県M

 

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南京事件70周年式典に参加して

 2007年12月13日は日本軍が南京城内に突入した日から70年目、この日、南京では「悼念侵華日軍南京大屠殺30万同胞遇難70周年及侵華日軍南京大屠殺紀念館拡建工程竣工儀式」が行われました。
 11年に亘って「南京大虐殺幸存者熊本証言者集会」を続けてきた「NPO法人・平和と人権フォーラム」(以下フォーラムと略)に、この式典への招聘状が届き、フォーラムでは訪中団を募って参加することになりました。私は・・・ ‘06年にもフォーラム会員として南京を訪ねていたのですが、紀念館は拡張工事中で殆ど見学できなくて、もう一度行きたい気持ちを強く持っていたので参加を決意したのでした。
 今回は式典参加と共に、熊本に司令本部があった第6師団が杭州湾上陸後、南京城に入場するまでの道のりを辿るということも旅程の中心にありました。第6師団は‘37年11月5日に杭州湾上陸後、嘉善、嘉興、湖州、広徳などを経て12月12日の夜明け、南京城壁1k手前に着いていることを、フォーラムから出された資料で知りました。
 私たちは12月10日の昼前に上海空港に着き、バスでその道を辿りました。・・・・・嘉興で1泊し、翌朝南京着という行程はたいへん厳しいものでした。バスで移動するだけでも大変な、およそ500k程はあると思われるこの道のりをコレラ発生などに見舞われつつも、狼藉を働きながら南京へ向かった重装備の兵士たちがどのような気持ちでいたのか、私には想像もつかないことでした。
 (式典の前日は幸存者の夏淑琴の証言と日本軍従軍看護士として南京に滞在した上田政子さんのお話をきいた。この部分割愛―事務局)
 13日の式典は30分程で終わりました。・・・・
 式典の後、紀念館の中に入りました。新しい紀念館の展示場面積は旧舘の11倍(9000m2)になっているとのことで、写真だけでなく、幸存者の証言、当時の情景の再現等々夥しい数の展示物が配置されていました。・・・・・広い館内、大勢の参観者、それに加えて私たちの滞在時間が限られていたので。一つひとつの展示物をじっくり見ることは不可能でした。私は、是非もう一度、紀念館に行きたいと思っています。 熊本県M

 

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会員からのメッセージ

たくさんの方々から寄せられた会費、カンパ、振込用紙に添えられた様々なメッセージに感激し励まされています。その一部を、事前にご了解いただきませんでしたので県名とイニシャルで紹介します。

  • TV、水戸黄門に繰り返し出てくる悪代官にもまさるとも劣らぬ只今の政府にいじめられている85歳の年金生活者で力のないことが残念ですが、せめて会費位は納入いたします。  2007.3.30.  東京 Kさん
  • 冠省 お働きに心から感謝いたします。過去の日本を顧みながらも運動を絶やしてはならないと思います。  不一  4/2 福島 K教会
  • 会報、絵鳩毅さん、高橋哲郎さんのお話、大田先生の憲法・教育論熟読いたしました。些少ながらお届けいたします。 4/2 兵庫 Sさん
  • 政府間交流がうまくゆかないのは非常に残念です。特に安倍さんの考え方ではうまくゆかない、本当に困ります。しかし民間で誠意を尽くしてかかわっておられ感服いたします。引き続き交流を目標として運動を続けられる由、ありがたいです。私は91歳でゆけませんが心は応援しています。 4/6 千葉 Eさん
  • 露骨な右傾化に、これからの若者や子どもたが毒されるのを座視できません。どこまでも抵抗しましょう。4/18 東京 Kさん
  • …私も今回の統一自治体選三期目に何とか当選できました。平和運動がんばります。5/7 山形Aさん
  • 先日ワシントンポストに下らない意見広告が出たようですが、あれは正に日本の恥さらし、恥の上塗りでしたね。ああいう恥知らずたちに政治を任せておくような状況が今度の参院選を機に徐々にあらたまって行くことを期待したいですが。 6/27 神奈川 Yさん
  • 侵略した日本人の子どもたちを育ててくれた中国の度量の大きさに感謝しています。11/11北海道 Hさん
  • 「侵略戦争の体験と反省」心にかみしめて読ませていただきました。感謝です。わずかですがお送りします。 12/7 島根  Wさん
  • 今年も1年間世話人の皆様方には本当にお世話になりました。母の介護と仕事の両立でなかなか米沢を離れられませんが、私もこの地でやれる事をしっかりやって行きたいと思っております。12/20 山形 Kさん
  • 貴会の全く変わらず、貫かれる意志の強さに感動いたします。12/14 東京 Mさん
  • 貧者の一灯です。ご査収を。1/18 山口Oさん
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事務局から

  • 本年度の興隆訪問はお休みすることにしました。訪問できる時期と、オリンピック開催期間が重なるため、交通事情・宿泊費高騰などが予想され、見合わせることになりました。興隆の人々に友情を伝える方法として、山の子どもたちに本を届けることなどを検討しています。また空いた時間で10回に及んだ興隆訪問のまとめをしたいと考えています。
  • 高校日本史教科書で、沖縄「集団自決」から「軍の強制」を削除させた勢力は、次のターゲットを「南京事件」としているそうです。歴史の偽造を許してはなりません。笠原先生のお話に期待しています。
  • イージス艦と漁船の事故も軍が国民・住民を守るものではないことをはっきり示しました。

 

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