<ブータンのキーワード>
祭り
祭りは人々にとって深い信仰を表現するとともに、数少ない社交の場でもある。ブータン人は大変な着道楽で、祭りでは着飾っておしゃれを楽しむ。有名なのはツェチュという祭りで、地方ごとに行われるが、その中でも最大なのがパロツェチュ。独特の暦を使うブータンでは、祭りの開催日は年ごとに異なる。ツェチュの主なイベントは、仏教のストーリーを劇やダンスで表現するマスクダンス(仮面劇)で、4〜5日間行われる。また祭りの最終日にはトンドルといわれる大仏画が開帳される。ブータンの人々は毎日、お弁当や酒を持参し、一家総出で祭りを楽しむ。
ゾン
タシチョゾンは国会議事堂の役目をはたしている。ブータン人がゾンに入るときには男性も女性も、正装の民族衣装でなくてはならない。夜になるとゾンは宗教の建物となり、男女を問わず、俗人は立入禁止となる。国王でさえ、ゾンの外に宮殿を構え、政務を執るためにゾンへ出勤するかたちとなる。(右の写真の男性は民族衣装のゴを着ている→)
生活様式
穏やかなほほえみで迎えてくれるブータンの人々は、われわれ日本人とよく似た顔立ちと風習を持っている。信仰が篤く礼儀を大切にし、歌と踊りとうわさ話が大好きで、ことあるごとに皆で集まり、楽しく酒を酌み交わす人々である。近代まで鎖国を守り、一度も外国の支配を受けていないブータンの人々には、外国に対するコンプレックスも偏見もない。
その国には昔から大事に守られてきた独特の文化が破壊されることなく鮮やかに保存されている。
国民の90%が農民であるブータンでは、食物の自給率が高い。人々は、水田やトウモロコシ畑、麦畑に囲まれた田舎屋や、もっと高地になるとヤクの毛で織られた遊牧民用のテントの中で、何百年来同じ様式で生活している。この自然に近い生活は、ブータンの人々の頑健な性格を形成した。
近年ティンプー市街では少しずつ開発が進み、3〜4階建てのコンクリート造りのアパートに住むサラリーマンも増えてきた。輸入品のショップや、レンタルビデオ店、中華料理・インド料理などのレストランなどもできてきた。
しかし、一見便利になりつつある都市に住む人々の中にも、いたずらに急速な近代化は避けなければならないという思いもあるようだ。
民家
ブータン式建築の特徴は釘を一切使わないことである。柱などの木の部分には彫刻や彩色が施され、白い壁面と美しく調和している。現在では、近代的な工法で建てられる家が多くなってきたそうだ。
嗜好品
◎酒(チャン)…米、小麦、大麦などを水煮した後、麹を混ぜて、発酵し始めたら土瓶に入れて密封保存して作る濁り酒。飲むときには上澄み液だけを飲む。このチャンを蒸留するとアラと呼ばれる透明な酒ができる。
◎バター茶(スージャ)…たん茶という固形の茶を削り、煮立ててバター、重曹、塩を加え、泡立つまでかき混ぜる。ブータンの人々は一日に何度も大きな椀で飲む。
◎ドマ…噛みたばこのような嗜好品。ビンロウジの実を水で練った石灰とともにキンマの葉で包んだものをチューイングガムのようにかんで楽しむ。なれない人が試すと、立ちくらみがすることがあるので注意が必要。
食事
ブータンの主食は赤米が中心だが白米もある。山岳地帯の米作が不可能な地域ではソバを主食としている。副食は野菜、肉、乳製品とトウガラシが中心で、代表的なものにエマダチというトウガラシ(エマ)とチーズを煮込んだものがある。ブータン人はトウガラシを香辛料としてではなく野菜として食べるので、ブータン料理は世界一辛いかも知れない。トウガラシの収穫期には、家々の屋根は乾燥させるために広げられたトウガラシで真っ赤に染まる。来客があったときには様々な料理を作ってもてなすが、普段はほんの少しのおかずでたくさんのご飯を食べるのが一般家庭の生活。
外国からの旅行客はホテルやレストランで西洋風の食事やインド料理、中華料理などあまり辛くない料理を食べることができる。(旅行客はミネラルウオーターを買うなどして、生水や水道水を飲まないこと。)
ことば
公用語のゾンカは、チベット語に似ている。地方によって方言が違う。1960年以来、英語が公立学校で主要言語として使われており、多くの人が英語を話す。南部ではネパール語も話される。
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