「お待ちしてましたわ、ミスター・ジェイスン・ウッド。あら、彼女も一緒ね」精神科医がドアをあけた。
「はじめまして、シルヴァマン博士。あなたのお噂はかねがね伺ってます」
「あら嬉しいわ。ボストンでは一番の医者だとよく言われるの」
「それに見事なお尻をお持ちだそうで」
「鍛錬の賜物なの。でも、お連れの方もなかなかのものね、ミスター・ウッド」
「僕はウッドじゃないよ、ケンジーです。こちらは同僚で恋人のジェナーロ」
「はじめまして、シルヴァマン博士」
「ハァーイ。スーザンと呼んでね」
「はい、スーザン。私はアンジェラ。アンジーでお願いします」
「僕はパトリック。でも、パットと呼ばれるのは嫌いなんだ」
「判ったわ、パトリック。で、悩みは何なの?」
「僕たち、地元では"ケンジー&ジェナーロ"と呼ばれてるんだけど、海の向こうでは"パトリック&アンジー"と呼ばれてるらしいんだ。」
「そのようね」
「マーロウやアーチャーやスカダーたちはラスト・ネームで呼ばれてるのに、何故か僕たちはファースト・ネーム。
アンジェに至っては愛称で呼ばれてるんだよ。これって差別じゃないかと思うんだ」
「確かにそうね、まさしく姓差別だわ。スペンサーもラスト・ネームで呼ばれてるしね」
「それはちょっと違うでしょ」
「カドカワのエージェントに、愛称で呼んでいいわよって言ちゃったの? アンジー」
「イイ男だったから、飲みながらつい」
「くそ! やっぱりそうか。怪しいとは思っていたんだ」
「さすがダーリン、ボストンで一番の探偵だわ。感ずいていたのね」
「違うわ、私のスペンサーがボストンでは一番なのよ。おまけにタフだし」
「なによ、タフだけが頼りのただのマッチョマンじゃない。犯人を探り出す腕は私のパトリックが断然上よ」
「そうね、それは認めるわ。でも、依頼者の悩みを解決するのは得意よ」
「ホント? 依頼者によく首にされるって聞いてるけど」
「まれにあるようだわ。で、ミスター・ウッド、他に悩みは?」
「パ ・ ト ・ リ ・ ッ ・ ク」
「私たち、あなたたちの真似をしてると、よく言われるのよ」
「私もそう思うわ。じゃぁ、真似じゃないと言える事あるの?」
「えー、『愛しき者はすべて去りゆく』の結末は知ってるかな?」
「聞いてるわ、かなり話題になったから」
「僕は、法に従ったよ」
「らしいわね、スペンサーなら絶対にあのような行動はしないわ。だけど『雨に祈りを』の結末はスペンサーの真似と言われても仕方ないと思うけど」
「そこを突かれると痛いなぁ。でも、僕は料理はしないよ」
「アン・ハ」
「ビールもそんなに好きじゃないよ」
「アン・ハ」
「ジムにも通っていないよ」
「アン・ハ」
「私は、おばさんじゃないわ」
「・・・」
「あなたたち、ここでちょっと待っていてくれない? ホークに電話してくるから」
バタン
「アンジェ、やばいぞ! すぐにブッパを呼ぶんだ」
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