喜多嶋隆
TAKASHI KITAJIMA

ブラディ・マリー

けれど、シンプルなカクテルほど難しい、というのがセオリーだ。
ブラディ・マリーも例外ではない。他人よりうまくつくろうとすると、ひどく難しいカクテルだ。
ウオッカをトマト・ジュースで割る。
そこへ、タバスコを1、2滴たらすバーテンダーもいる。 ウスター・ソースを入れることもある。セロリのステックを入れるのも、よくある手だ。
パパは、コショウをひと振り、入れていた。
それはそれで悪くなかった。けど、わたしは、ひと工夫すれば、もっと良くなるような気がしていた。
ある日、同級生のメイ・リーという娘の家に立ち寄った。
メイ・リーは中国系だった。家は、ダウンタウンで、香辛料と干したホタテ貝や何かを売っている店だった。
彼女に言わせると、コショウなら、ミクロネシアのポナペ島産のが世界一で一番いいらしい。
さっそく、小さなビニール袋に入れたものをくれた。
そのコショウを碾いてみると、確かに、香りも味も、まるで普通のものとはちがう。濃厚なのだ。
わたしは、そのポナペ島のコショウを、さっそくブラディ・マリーに少し入れてみた。
ひと口飲んで、驚いた。

喜多嶋 隆
「ブラディ・マリーを、もう1杯」平成七年
角川文庫・P37より

ハワイの私立探偵「ブラディ・麻里」が作るカクテル。
常夏のリゾート地で飲むその味は、さぞ格別でしょう。
是非、二日酔いの朝に飲みに行ってみたいですな。

<gaby>27 Jun 1999 16:27:44