DICK FRANCIS
ディック・フランシス

ピンク・ジン

ピンク・ジンはいろいろな色があって、 今飲んでいるものの色を覚えようとしているかのように、 グラスを持ち上げて光に当て、じっと見ていた。

ディック・フランシス
「利腕」1979年
[ 訳 ] 菊池光
ハヤカワ文庫・P263より

たいがいの週、キャヴェンディシュ・ホテルの階上のバアで正午に会うことにしている ラドナー探偵社の敏腕調査員「シッド・ハレー」と、彼の大切な友人であり姑でもある「チャールズ・ロランド」。 訳あって別な場所で落ち合うこととなった二人。 ピンク・ジンが大好きなチャールズは、いつもと違うカクテルの配合や銘柄をチェックしているようです。

1870年以降の英国では、 ジンの中にビターズやオレンジ・ビターズ、またはアンゴスチュラ・ビターズなどを混ぜるジン・カクテルが好まれた。 後に名前が変わり、このカクテルはピンク・ジンと呼ばれるようになった。

<gaby>05 Oct 2003

プルーフ

「しかし、あらゆる種類のワインがある」
「もちろん、ありますよ、いろいろな種類のブドウがあるのだから。 しかし、シャンパンの多くは、黒ブドウから作られるのです・・・ 物は見かけと違う場合が多い、探偵であるあなたには興味深い事だと思うが」
「フム」彼が冷ややかに言った。瓶の棚を見回していた。 「探偵として、私が関心があるのは証拠(プルーフ)だ・・・ で、プルーフとは何だ?」
「液体に火薬を混ぜて火をつけ、青い炎を出して燃え続けたら、それがプルーフですよ」
ちょっと戸惑っていた。「何の証拠(プルーフ)だ?」
「その液体の少なくとも五十パーセントがアルコールだ、という証拠(プルーフ)ですよ。 それが、三世紀前に初めて蒸留酒に税をかけた時、液体がアルコールである事を確かめた方法です。 五十パーセントのアルコール、百パーセント立証。 今は、火薬と火でなく、液体比重計でパーセントを計ります。その方が安全である事は確かだ」
「火薬には、このところ、君も私も縁がありすぎた」

ディック・フランシス
「証拠」1984年
[ 訳 ] 菊池光
ハヤカワ文庫・P253より

飲みながらお互いの持つ情報を分析し始める、私立探偵「ジェラード・マグレガー」とワイン商「トニイ・ビーチ」。
アルコール飲料の標準強度と証拠をひっかけた洒落た会話です。


<gaby>11 Jul 1999 11:25:32

ラフロイグ

「どうなんだ?」厳しい口調で訊いた。
「ラフロイグではない」
「確かか?」
「絶対に間違いない。ラフロイグは、特に煙の香りが強いのだ。ピュア・モルトだ。 今私が味見をした物にはモルトはほとんど入っていない。前と同じウィスキイだ」
「ありがとう、ミスタ・ビーチ」いかにも満足そうに言った。

違法にウィスキイの詰め替えを行なっていることを暴くために、 協力を求められた主人公のワイン商、トニイ・ビーチ。即座にそれと断言するところはさすが。

ディック・フランシス「証拠」 菊池光訳
ハヤカワ・ミステリ文庫 P62より


<エイジ >24 May 1999 00:40:03