後藤 英 / Suguru Goto

1966年生まれ。アメリカ、ボストンのニューイングランド音楽院、そして、ドイツのベルリン工科大学などにて学ぶ。作曲をアメリカにて、アール・ブラウン、ロバート・コーガン、ルーカス・フォス、ドイツでは、ディーター・シュネーベル、フランスではトリスタン・ミュライユに学ぶ。
タングルウッド音楽祭以来、国際的な評価を得る。主な賞歴は、ボストン・シンフォニー・オーケストラ・フェローシップ、タングルウッド音楽祭より、クーセヴィツキー賞、ワシントン州のマルゼナ国際作曲Kコンペティションにて第1位、ドイツにてベルリナー・コンポジション・アウフトラーゲ1994、パリのユネスコで行われた、IMC国際作曲家会議にて入選などが挙げられる。
作品は世界各国の音楽祭、タングルウッド音楽祭、アスペン音楽祭、インヴェンショーネン、CICV-ニュイ・サヴォローズ、ICC、エレクトロフォリー、インターナショナル・シアター・フェスティヴァル・ベレジリア、秋吉台、SONARなどにて演奏されている。
1995年、マルティ・メディア・オペラ作品、"NADA"がベルリンのシャウルシュピール・ハウスにて演奏される。同年より、IRCAMにてコンピューター音楽を研鑽し、その後、研究員として、ジェスチュアル・インフォマティックの開発に携わる。1997年、カナダのモントリオール音楽院よりの招きで、コンポーザー・イン・レジデンスとして1ヶ月滞在する。2000年、東京フィルハーモニによりオーケストラ作品 "Resonance II" がオーチャード・ホールにて初演された。
近年にては益々、コンピューター音楽の活動を盛んに行っている。主なコンピューター音楽作品をNHK電子音楽スタジオ、ベルリン工科大学の電子音楽スタジオ、オランダ、アムステルダムのSTEIM、フランス、パリのIRCAMにて作品を製作する。作品は、アメリカ、イギリス、イタリア、ドイツ、フランス、ウクライナ、スペイン、カナダなどにて演奏されている。作品は、ドイツのエディション・ヴァンデルヴァイザーより出版、"Onomatopoeia and Montage"は、ドイツのアカデミー・デア・クンストより、CDに収められている。

Temps tressII for Zephyros and Computer (2001) (タン・トレッセ2)

この原稿を世紀が変わろうとしている夜に書いている。
かつてアメリカの作曲家、ジョージ・クラムに作曲を見てもらった時に、時間について語ってくれたことが今だに自分の作曲に影響している。数の単位で計れる時間と、人間の心理的な時間と、二つの時間が存在することについてだ。数の単位での時間とは、例えばストップウォッチや時計で計ったものを指し、心理的な時間とはその数の単位では同一でも、長く感じたり短く感じたりすることを意味する。
作曲において時間をシステマティックに構成する際、少なくとも数の単位の助けをかりた譜面に記す時、これらのことはおおよそ間違いではないであろう。時間が過去から未来へと一方方向で進む直線とすれば、時間のパラドックス、実在の問いなどの論証に惑わされずコンセプトを築きあげることが出来る。
やがてその楽譜が音になり、音楽として知覚される時には、一直線で進むはずの時間は複雑な要素を十分含んでいることを見い出すことになる。
音楽の時間を知覚する上で、もう一つ考慮すべき点がある。ある瞬間とある瞬間を比較すること、ある時間の単位とある単位を記憶で比べること、そして、最後に、作品全体としての時間単位として知覚することである。
従って、人間の時間の知覚をあえて音楽的素材とし、それらを作曲の文脈上で構成し直すことが、この作品での課題である。

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