MAX SCHLOSSBERG

DAILY DRILLS and TECHNICAL STUDIES for TRUMPET

M.BARON.Co.    Order Dept. P.O.BOX 149 OYSTER BAY, N.Y. 11771

日本語訳:紀藤亜也子


 12年前の今月、世界は、全時代における偉大な師のうちのひとりであり、また、最もすばらしいトランペットの師を失った。
 Max Schlossbergは、音楽家としてだけでなく、人として敬愛され、ニューヨーク・フィルハーモニック・シンフォニーで26年間、グスタフ・マーラーの方式をとりながら演奏した。そして、晩年はトスカニーニの指揮のもとで演奏した。彼の師としての偉大さは、現在彼の弟子たちが、世界中の多くのプロオーケストラで主席を担当しているという事実からも明らかである。

 新しい生徒がSchlossbergのもとを訪れると、彼は、即座にその生徒が、トランペットを吹く上で、重要かつ初歩的な二つの要素を習得しているかどうかを判断するために、ロングトーンを吹かせた。その二つの要素とは、正しい呼吸と、正しいアタックである。これらは、ともに音の質、フレーズのコントロール、技術的に難しいパッセージの演奏のための能力を統括している。

 Schlossbergのメソッドのなかで最も重要な基本は、音やフレーズの持続のために、トランペットに安定した息の吹き込みを保つ能力の習得である。第一段階では、彼曰く、決まったパッセージを吹くのに必要な息の量を判断し、過剰に吸い込まないこともまた重要である。肺の中の過剰な空気や、頻繁な息継ぎは、息苦しい感じを引き起こし、結果として音の途中でブレスをしてしまうことになる。

 肺の中の空気は、横隔膜に支えられて、上の歯に先をつけた状態の舌にむかって吐き出される。空気は、舌が引っ込められるとすぐに、楽器の中に放たれる。そして、音は、そこで作り出された振動の数によって決められる。

 音のアタックや出だしは、音をきれいで安定したものにしようとするとき、二番目に難しい局面であると言われる。

 Schlossbergの、良いアタックを上達させるための方法では、トランペットの(音の)幅を、低音、中音、高音に分け、シラブルを、低音のときはTa、中音のときはTu,高音のときはTi、もしくはTeeとした。音を出すために、固定された唇の位置や、アンブシュアがとられるべきであり、音階を通して、変えたり、下げたりしてはならない。音階における唇の動きは、Ta,Tu,Teeのそれぞれの、シラブルを開いた発音と、中間の発音と、ほとんど閉じた発音の変化のみである。母音の変化は、楽器にかかる圧力の変化を生じさせる。アンブシュアの圧縮をするほど、圧力と音が高くなる。

 Schlossbergの最も役立つドリルに先立って必要なのは、生徒がTaからTuに、そしてTuからTeeに急速に発達することである。Ta-ee、Tu-ee、Tee−eeのシラブルを使えば、上昇形のインターバルをレガートで吹くことができ、Te-ee、Tee-u、Tee-aは、下降形に使えることがわかった。このようなルールに注意することによって、演奏者は誤ったスラーを避けられるだろう。もし、トランペッターが、演奏の中で唇の位置を変える必要があると思うとしたら、速いパッセージを吹いたり、音階を通して定まった音質を保つのは不可能であろう。

 子音のTは、この説明において、例として用いられたものである。しかし、Tは、強い、もしくは爆発的なパッセージを吹くときにのみ用いられるということを付け足す必要がある。楽譜でやわらかい音が要求されているときは、演奏者は、適した母音の前に、Dという子音をつける。そして、最後に、フォルテ、ピアニシモのどちらの場合でも、唇の位置は同じである。


Site authored & maintained by ebakos@jade.dti.ne.jp