梗概

第一幕

コルハが口に咥えている魔法の宝玉の力によって、悪右衛門は、保名を恋い慕う葛の葉を我が物にしようと企んでいる。 悪右衛門は妖魔の矢を鍛冶し、配下の狩人らとともに狐を狩り、保名の領地、阿倍野の荒野に狐を追い込む。そして狐に傷を負わせ宝玉を奪う。 悪右衛門がコルハを殺そうとしたとき保名が現れ、葛の葉の誕生日を冒涜する振舞いを禁じ、悪右衛門を敗走させ、コルハに玉を取り戻してやる。 保名は憐れんで、狐に云う。善行を積み、仏陀の慈悲に縋り、惨めな狐の生からの解放とより高き転生を求めるようにと。 コルハが姿を消すとともに、葛の葉が従者とともに現れる。 誕生日の祝宴のさなか、保名の城は炎に包まれ、悪右衛門とその大軍が突如乱入する。悪右衛門は保名に傷を負わせて圧倒し、葛の葉を魔道師の城へと連れ去る。保名の手の中に葛の葉の袖だけが残る。

第二幕

湖水を一望に見渡す岩山の端、その森の中で、狐の乙女らが月光の下で踊りながら、女王コルハの目醒めを待っている。 コルハは月に懇願し、葛の葉へ変身するための助力を仰ぐ。恩人保名を救う手立てがあるとすればそれだけであった。その保名は今、悲嘆と負傷から気を狂わせ、彷徨している。保名が現れる。未だに葛の葉の引き裂かれた袖をその手に掴んだまま。保名は葛の葉を見つけたと信じ込み、コルハに導かれるまま深山の隠れ家へと赴く。 悪右衛門とその従者たちが間近にやって来る。彼らは森を徘徊し薬草を集め、それをもとに愛の媚薬をつくり、虜に飲ませるつもりである。コルハは戻って、乙女らと一緒になり、彼らに身を任す振りを装う。 魔道師とその従者たちは、お追従と酒とで歓待を尽くされ、魅惑的な女たちを追いかけていく。だが、彼女たちの導く先は断崖で、彼らはそこから湖水に転落してしまう。

第三幕

コルハが家の表に座っている。彼女と逃亡者保名の住むその家は丘陵にあり、近くには観音堂がある。コルハは稚児に歌をうたってやっている。 巡礼の一団が現れ、施しを乞うてくる。コルハは施しを与える。 その悲哀の歌が琴線に触れて、コルハは巡礼に事情を尋ねる。そして、彼らが葛の葉の家臣であり、今はお堂へ向かう途中だということを知る。そこは三十三番目の最後のお堂であり、彼らはそこで保名の帰還を神に祈っていた。 観音の慈悲の望みも絶たれ、葛の葉は尼になる覚悟で、お堂で待っている。 コルハは巡礼たちにもう一度望みを持つよう励ます。そして、彼らが行ってしまった後に保名が現れる。森の中で楽しく過ごす計画をいっぱい思い巡らして。コルハは複雑な気持ちで保名と顔を合わせるが、保名はそれを理解できない。かつて彼女の受けた、善行を積み、仏陀の慈悲に縋り、転生を求めるように、というお告げの話をしても。 コルハは袖を引き裂き、これをお守りだと言ってお堂にいる少女へ渡して欲しい、と保名に頼む。 コルハの物々しい言葉に驚いて、保名は気の進まぬながら、その慈悲深い思いを伝えるべく出掛けて行く。 稚児へお祈りをしながら、コルハは魔法の玉をその子に与え、書き置きを残す準備を整える。 法力が剥がれ落ち、コルハは狐の姿を取り戻しはじめる。 コルハの手は狐の前脚に戻ってしまい、筆を口に咥えてようやく書き物をしたためる。 再び狐の姿。コルハは窓を跳び越え森の中へ入っていく。そのとき、巡礼たちが感謝の歌とともに現れる。保名と葛の葉に付き随い、その不可思議な恩人を一目見ようと思って。 彼らは壁に書かれた伝言を読む。 保名は彼女がかつて助けてやった妖狐だと思い至り、ひざまずき祈る。一方、葛の葉は子供を腕に抱きかかえ、愛を求める泣き声に応えてやる。