ゼフュロス誕生顛末記


ゼフュロスIV誕生!!

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ゼフュロスIII誕生!!

グローバル社から連絡があり、Bb管のゼフュロスを試作してみたいが、どうだろうとの申し出があり、快諾した。10月14日から、池袋サンシャインシティで行われる楽器フェアに出展。現在はベストブラス製のゼフュロスと同じ仕様に改良されている。


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 スライド付きトランペットの構想は、新しい音楽を志すトランペット奏者にとって、それほど特殊な思い付きではないと思われる。ただ、限られた管の長さの中でスライドの部分を稼がなければいけないという必要から、技術的にはかなり大変なものがあるようだ。また大量生産をする性格の楽器では無いので、必然として高価にならざるを得ない。しかも私が一番欲しいと思っていたのはC管である。欲しいとは思いつつも諦めていた所に、一筋の光が差した。1993年の3月の事である。

 名古屋のバルドン楽器で管楽器のメンテナンスをしていらっしゃる竹山さんに依頼したところ、なんとかやってみましょう、という返事を頂いた。そして七月の末に試作品が私の手元に届いた。なにせ予算がない、既成の楽器を繋ぎ合わせて造っただけに、その作業たるや、大変なものがあったろうと想像するのだが、やはりこちらを立てればこちらが立たずで、苦労したらしい。まず、ベル。既成のベルでは長すぎて、駄目。そこで普通のB♭管のベルを絞って付けたのだが、やはり音色の面でかなり無理があった。音程はすこぶるいいのだが、、、。

 すぐにでも名古屋に飛んでゆきたい心境であったが、仲々そうもゆかず、竹山さんの了承を得て、ヤマハの管楽器アトリエに改良を依頼した。快く引き受けていただいて、ピッコロトランペットのベルを取り付けた。音色は飛躍的に良くなったが、それでも長すぎて、B♭管にもならない。後はスライド部分の改良をするしかなくなった。既にスライドの幅は狭めてあるのだが、このスライドは仲々良いので少し切ってB♭管用に使うことにした。しかし私の欲しいのは、C管なのである。スライド部分は某海外メーカーのJ社のもので、ヤマハにお願いするわけにはゆかず、困ってしまっていたところ、今度はネロ楽器の社長から、うちでやってもいいよ、との事で、今度はネロ楽器にお世話になる事になる。ただスライドだけ買うとなると、半年位かかるという事なので、ソプラノトロンボーン一式を購入した。スライドは別に半年後にもう一本届くとのこと。

 さてC管である。とにかく長さをC管用にしなければならない。あまり短く切ると、グリッサンドの音程の幅が狭くなり、面白みがなくなる。1ポジションの音程が悪くなるなど、いろいろ問題が出てきた。2日間程、ネロ楽器の飯塚さんと膝付き合わせて、ああでもない、こうでもないとやって何とか本番には間に合った。飯塚さんには、専用のケースまで作っていただいた。

 そして今年の一月にゼフュロスは名古屋にお里帰りをした。今度はベルの焼き鈍しと銀メッキを施してもらった。これは、音色を豊かに、幅広くさせる為。それが現在あるゼフュロスの姿である。

 そういう訳でこの楽器が今の形になるまでには、たくさんの方の、創意工夫、試行錯誤、残業必死があったのである。誕生させてくれた、名古屋バルドン楽器の竹山さん、佐々木君、ベルの改良をしてくれたヤマハ管楽器アトリエの亀山さん、中沢君、スライド部分の改良をしてくれたネロ楽器の飯塚さん。心から感謝感謝、雨、霰であります。またこの楽器のために快く作曲編曲依頼を引き受けてくれた、数多くの作曲家の方々、心より御礼申し上げます。

この楽器はまだ誕生したばかりです。レパートリーもまだ余り有りません。この楽器の可能性を拡げるべく、頑張ってゆこうと思っています。

(1993/11/22 TRIO ZEPHYROS 東京公演プログラム用に作った文章を元に作成)


ゼフュロスII誕生!

 こうして、皆さんの暖かい援助で誕生したゼフュロスであったが、まだまだ、改良の余地は残されていた。まず、音色と音量の面。ピッコロトランペット用のベルを使用したため、音がなんだか、甲高い。フォルテを吹いても、通常のトランペットのような力強さは、望めない。

 そこで、ゼフュロスIIを、新しく作ろう!と、思い当たるに至った。勿論、ゼフュロス一号機は、高音用に残すことにした。まず、ピストンはヤマハで当時新しく開発されたXENO II のものを使用する。スライド部分は、一号機の際に作ったB♭用のものを、更に、幅を縮めて、長さも切って使った。ベルの部分であるが、ここには、ヤマハのE♭管のベルを使用することにした。細かな調整に関しては省略するが、音量、音質とも申し分のない仕上がりである。ここでも、ヤマハの管楽器アトリエの亀山さん、青柳さんには、多大な援助を頂いた。この場を借りて、御礼申し上げます。

こうやって、文章を書いている間にも、ゼフュロスのための作品が生まれつつあります。新しい表現方法を加えて、音楽の深い部分まで到達することができるように、これからもフレッシュな気持ちで音楽と向き合いたいと思っています。

(1998/10/22 龍安寺CD制作に当たって記す)



ゼフュロス(スライド付トランペット)II について 

キー : C

音色については、通常のC管よりやや鋭い音を持っている。スライド部の長さを稼ぐため、管の細い部分が多く、それゆえ大きなベルは取り付けられなかった。現状ではE♭トランペットのベルを焼き鈍して柔らかくし、音色に幅を持たせることで、低音域にも対応している。

音域 : 高音域は通常のトランペットと同様だが、低音域は長3度広くなっている。つまり状況にも依るが通常、(C管だとして、Bb管の場合は長二度低くなる。)D~Dの3オクターブ程度であろうと思われる。詳しくはポジション表をご覧下さい。

譜例中の写真は、今は無きゼフュロスIである。

特徴 : スライド付と言うことであるから、グリッサンドは自由に扱える。トロンボーンにおいては、使えなかった音程にもピストンとの併用によって何の困難もなく使用することが出来る。グリッサンドの幅については、ピストンを押さなかった場合増4度、ピストンを全部押した場合に長3度程度確保できる。

スライドとピストンを併用することで、全く新しい表現が可能なはず。新しい音楽を目指す作曲家の方々に、もっと斬新なこの楽器の使い方のアイデァをお考えいただきたい。

【これまでにゼフュロスのために書かれた主な作品】

作品目 作曲者名 初演日時 初演場所(コンサート名)

ミカ(サッフォーの詩による愛と死の歌) 伊東乾 1993.11.22 川口リリア音楽ホール(トリオ・ゼフュロス演奏会)

フェスティーナレンテ(デュオバージョン) 伊東乾 1994.5.15 FM東京ホール(東京オーケストラルスクエア演奏会)

フェスティーナ・レンテ(協奏曲) 伊東乾 1994.9.16 オーチャードホール(東京フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会)

ペシャワールの谺  野田雅巳 1994.12.23 福島区民センター(曽我部清典トランペットリサイタル)

クィド・スム・ミゼール(哀れなる我何を) 中川俊郎 1995.10.26 北とぴあつつじホール(三橋貴風・吉村七重デュオリサイタル)

源氏物語(モノオペラ) 松平頼則 1995.10.28 武生市民会館

Πολυπροσωποζ III  川島素晴 1995.12.21 北とぴあつつじホール(グループ「現在形の音楽」作品展)

モノディ  土屋 雄 1995.12.21 北とぴあつつじホール(グループ「現在形の音楽」作品展)

唇・舌・歯・喉のためのエチュード   中川俊郎 1996.1.5 東京文化会館小ホール(曽我部清典トランペットリサイタル)

KAGAMI  中村滋延 1996.1.5 東京文化会館小ホール(曽我部清典トランペットリサイタル)

ファンファール・ストリエ  中川俊郎 1996.8.3 水戸芸術館(ダニエル・ビュレンヌ展開幕イベント)

化身V  山口 淳 1996.10.15 フィリアホール(グループ「マイナス6」作品展)

インタールード・フォー・レクイエム  松平頼暁 1996.12.6 川口リリア音楽ホール(曽我部清典・松居直美デュオリサイタル)

コンプレッション・ポテンツィアータ  久田典子 1996.12.6 川口リリア音楽ホール(曽我部清典・松居直美デュオリサイタル)

Πολυπροσωποζ II  川島素晴 1997.4.27 川口リリア音楽ホール(ピストンクラブ定期演奏会)

eco lontanissima V  田中吉史 1997.5.10 北とぴあつつじホール(曽我部清典トランペットリサイタル)

Nach allen Seiten F liegen.....  曽我部清典 1997.5.10 北とぴあつつじホール(曽我部清典トランペットリサイタル)

忘れられた時 松岡貴史 1998.1.17 徳島市郷土文化ホール(松岡貴史・みち子作品展)

Duo Duet 柴山拓郎 1999.6.4 武蔵野市民文化会館(曽我部清典・松居直美デュオリサイタル)

変奏曲、2つの間奏と終曲を伴う 川島素晴 1999.6.4 武蔵野市民文化会館(曽我部清典・松居直美デュオリサイタル)

Duo Duet(solo version) 柴山拓郎 1999.9.26 吉祥寺WINDS GALLARY(曽我部清典トランペットリサイタル)

A study of Resonance 土屋雄 1999.9.26 吉祥寺WINDS GALLARY(曽我部清典トランペットリサイタル)

天水〜ゼフュロス・鉦・キーボードのための 松岡みち子 2000.2.20 徳島県立近代美術館(曽我部清典トランペットリサイタル)「意味の制作」

メガホンM 三輪眞弘 2000.7.14 ロッテルダム現代芸術祭「just about now」

タン・トレッセ2 後藤英 2001.2.10 バリオホール トランペットアンサンブル&フォーラム 曽我部清典「伝統とテクノロジーの狭間で」 

ゑすとslide物語 川島素晴 2001.3.25 藤野芸術の家(曽我部清典トランペットリサイタル)

雪女 マウリツィオ・ピサーティ 2001.10.22 ローマ文化センター(曽我部清典トランペットリサイタル)「」

雪中の狩人 後藤國彦 2002.12.27 大泉学園ゆめりあホール(The Mercury Project no.1)

融ける石 平部やよい 2003.8.25 新居浜市文化センター大ホール(曽我部清典サマーコンサート)「こころとからだ」

【編曲された作品】

輝ける樹木 鈴木隆太編(D・シルビアン) 1993.11.22 川口リリア音楽ホール(トリオ・ゼフュロス演奏会)

十二宮 中川俊郎・曽我部清典編(K・シュトックハウゼン) 1997.5.10 北とぴあつつじホール(曽我部清典トランペットリサイタル)

ルーマニア民族舞曲 鈴木隆太・曽我部清典編(B・バルトーク) 1997.8.24 土居ユーホール(曽我部清典トランペットリサイタル)

ペンタトニックジャーニー 鈴木隆太・曽我部清典編(民謡) 1997.8.24 土居ユーホール(曽我部清典トランペットリサイタル)

夜霧への感謝 鈴木治行(猪俣公章) 1999.8.5 新居浜文化センター中ホール(曽我部清典トランペットリサイタル)

ファーストラヴ 原田敬子(宇多田ヒカル) 2000.9.23 松山町町民センター(高橋アキ・曽我部清典デュオコンサート)


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