本願寺派法式用語

1.浅沓(アサグツ)              2. 朝夕の勤行(ゴンギョウ)
3.院家(インゲ)               4. 院号(インゴウ) 打敷(ウチシキ)
5.打敷(ウチシキ)              6.柄香炉(エゴウロ) 
7.塩梅(エンバイ)              8.大師号(ダイシゴウ)
9.春日卓(カスガジョク)           10、漢音小経(カンノンショウキョウ)
11,金灯篭(カナドウロ )            12.菊灯(キクトウ ?(キン)
13. きん                   14.庫裏(クリ) 華束(ケソク)          
15.華束(ケソク)                16.華瓶(ケビョウ)と花瓶(カヒン)      
17.華鬘(ケマン)                 18.差定(サジョウ)   
19.山号(サンゴウ)               20.宗名・浄土真宗(シュウメイ) 
21.什物(ジュウモツ)              22.巡讃(ジュンサン) 
23.衆徒(シュト)                 24.新発意(シンボツイ)
25.中啓(チュウケイ)               26.手次(テツギ) 
27.庭儀(テイギ)                28.伝供(テング)
29.戸帳(斗帳)(トチョウ)           30.お斎(トキ)
31.念珠(ネンジュ)               32.度牒(ドチョウ) 
33.仏飯器(ブッパンキ)            34.仏壇(ブツダン) 
35.法名(ホウミョウ)               36.坊守(ボウモリ)
37.本尊(ホンゾン)               38.三具足(ミツグソク)・四具足(シグソク)
39.門主(モンシュ)                40.輪灯(リントウ) 
41.摩尼珠(マニシュ)              42.法具・仏具の読み方・数え方
 

1.浅沓(アサグツ) 
浅沓は僧俗共に用いる。動物や鳥の皮で作られている草履は堂上では控えていた。また近年、本願寺派では用いないが、襪(シタウズ・指のところが開いていない足袋、上部を紐と止めてある。束帯の時には必ず着用。本派では300回忌以後用いた)。また七条袈裟を付けた礼装の時、内陣で用いる沓を草鞋(ソウカイ)という。浅沓は黒塗りの木の沓で、服装に制限がない。草鞋は、布が張っている沓。今でも葬儀の折等に用いている。

2.朝夕の勤行(ゴンギョウ)
毎朝の勤行を「おあさじ」といい、夕方の勤行を「おゆうじ」という。本願寺では、阿弥陀堂では讃仏偈、御影堂では正信偈和讃が勤まる。本願寺通紀三に「元禄8年正月8日以来朝座友座に小五条を著す」とあるように、小五条を着用する。この小五条を晨朝袈裟ともいう。

3.院家(インゲ)
門跡寺の別院において、本寺を助けて諸般の法務を執行する者を院家衆を言ったことに始まる。宇多天皇が仁和寺に入りご門跡の号が始まる。その折り、貴族の人が相従って出家し、寺中の小院に住し院家衆と称した。門跡寺には必ず院家衆が居て、他の僧と区別したことによる。
本願寺では、第11代宗主顕如上人の代に准門跡となり、下間家の者が院家衆(坊官・法眼法橋に任叙)となる。
後に、院家が堂班のごとく格式をあらわす名となり、現在では、「ゴインゲ」住職を呼ぶ言葉として用いられている。

4.院号(インゴウ)
院号とはもと天皇が出家されたときに名のられた名前であり、その後ご門跡寺院の住職になった人に授けられた。さらに仏法に功績のあった人を讃えて授けられるようになる。本願寺派では、宗門の護持発展に功績のあった人に院号が与えられる。生前院号は昭和22年より永代経懇志300円の進納者に授与。
浄土真宗では、第8代蓮如上人から院号を用いているが、『考信録』に「本山歴世の宗主。覚如師より如の字を通称とし。実如師より光の字を緯に冒らしめ。証如師より信の字を廟号に冒らしめたまい」とある。ちなみに蓮如上人は、信証院蓮如。

5.打敷(ウチシキ)
仏前の卓上を荘厳するために用いる錦織で作られた布。『無量寿経』巻上にも「衆宝の妙衣を以て偏に其地に布けり」とあり。正面に3角形が見えるように掛ける。喪の場合は、戸帳も打敷も礼盤打敷も白地のものを使う。
この打敷の下に掛ける下掛けで、重い法要などの時に用いる前卓等の周囲を囲み覆う布のことを水引(卓圍・ミズヒキ)という。共に報恩講や年回などに用い、平常時には用いない。
七五三等の供御をすえ奉るとき下に打ちしくものとして用いられていたものの転用。(真宗故実)
『実悟記』に「死人の遺物などに小袖の類進上候をば蓮如上人は、その志し済申されそうろう、日中との間に面織物板物などにて候へば、にわかに打敷にせられ、聖人の御前にしかせられたるよしに候」とあるように、真宗では、死人の遺物を打敷となして、仏祖前に供えられたることが蓮如上人の御代になされた。
『双林書』「昔はただ新しき物を用いる。今は死人の小袖なんどを用いることは当家にては蓮如上人より始まれり」とあり。

6.柄香炉(エゴウロ) 
柄がついた保持する香炉。導師礼盤上で、出音するときに保持する。また導師以外でも画讃頭などが保持して出音する場合もある。香炉を手に保持することは『涅槃経』等の教典の中もみえ、インドより伝来したものといわれているが定かでない。フランス人L・コック によって、西暦2.3世紀製の青銅の柄香炉が中央アジアより発見されている。

7.塩梅(エンバイ)
総称して5音以外の音を塩梅と言うが、通常は、各旋律型に定められる基本の音を発する前に下位の音を出音し、また旋律型の末尾に少し音をはね上げる装飾音を言う。

8.大師号(ダイシゴウ)
大師とは「大導師」「大師範」の意味であり、本来は「国や帝王の師となるべきもの」という意味で使われた言葉。学徳の優れた高僧に対する敬称であり、後に高僧没後に朝廷から贈られる名前「諡号」(シゴウ)として用いられようになった。
大師号は、日本では清和(セイワ)天皇の貞観8年(866)に、天台宗の最澄に伝教大師、円仁に自覚大師の号が送られたのが最初と言われている。その後、空海に弘法大師などが贈られ、現在までに25人に与えられている。
浄土真宗では、親鸞聖人に、明治9年11月28日、明治天皇より「見真大師」号が贈られ、明治15年3月22日、蓮如上人に「慧燈大師」が贈られている。御影堂正面欄間に掲げられている「見真」の額を「勅額」といい、明治12年9月29日、明如上人の内願により明治天皇より賜った。ちなみに「見真」とは、大経の「慧眼見真能度彼岸」の文による。

9.春日卓(カスガジョク)
筆返しのない卓で、本山の本堂御影堂両向畳前に置かれているもの。本堂では折り本の三部経が、御影堂では正信偈・和讃が置かれ共に「かぶせ蓋」がしてある。一説には、春日明神供膳の下の台であった物の転用で、一般寺院では、祖師前・御代前に1対置く場合が多い。

10.漢音小経(カンノンショウキョウ)
ご本堂の阿弥陀経は、嵯峨本にて。綽如上人の阿弥陀経も嵯峨本で、奥書に「嵯峨本の如く毎朝すべし」とあり。この嵯峨本は「くだらよみ」(純粋な漢音ではない)であった。
「漢音小経」で、玄智『考信録』には「御本堂の阿弥陀経は嵯峨本とて、阿弥陀経のすり本候、漢音を付たる本にて候。綽如上人あそばされたる阿弥陀経を披見申候つるにも嵯峨本の如く御付候て、如此さが本の如く毎朝すべしと、奥書にあそばしおかれ候き。此本は漢音ばかりに非ず、呉音も少しまじり、唐音もあり、くだらよみとて聖徳太子の百済国より取寄られしよしにて候間、くだらよみと申して候。云々」とある。
現在のものは、連門課誦(西山徒慈空作)にあるものに同じ。漢音小経の舌舌(ゼゼ)、毎朝本堂で読誦されていたが、安永元年より傍廃、讃仏偈。正信偈の舌舌も廃す。舌舌とは舌舌読みのことで、7文字を3文字に省略して読む読み方で、節を付けずに棒読みで読む読み方も舌舌という。

11.金灯篭(カナドウロ)
宗祖450回忌の折、ご真影前につるす(14代・寂如上人時)。本堂はそれより50年後の明和の初年より用いている。金灯篭を用いるまでは、御厨子内に菊灯をにて灯明を上げていたが、天井に煤がたまりかんばしくないのでこれを用いるようになった。
現在では、開閉の扉とある側を正面に向けて設置する。

12.菊灯(キクトウ)
仏前に供える灯明台。菊の花の開花した形からこの名が付いている。元は宮中で用いられたものであるが、現在寺院では、脇檀や余間に依用されている。

13.きん(キン)
読経の前後、中間にバチで打ちならす仏具。大?・小?・引?がある。引?は通常、底に穴をあけて、木などで作られた柄に連結されているものであるが、もと勤式の際に衆僧を引導するという意味で引?と名付けられたと言われる。鈴はごく小さな4.5寸のものを鈴という。他に沙鑼があるが、沙鑼は内側と打つ。緩急や作相などの打ち方はしない。本山では阿弥陀堂では小?、御影堂では沙鑼が使われている。一般寺院では、沙鑼は内陣、小?は下陣で使われる。また?は1枚と数える。バチは?・沙鑼・鈴共に、平時はかねの中に入れとおき、勤行が終わり立つ前に静かに音がしないように入れておく。

14.庫裏(クリ・裡も同義)
寺院において僧の居住する家屋。仏飯や僧への食事を調える等、法式礼拝以外の雑事をするところを総じて庫裏という。一説に庫は物を蓄える倉庫、裏は裏方という意味。もとは仏祖に供える食物及び僧侶の食物を調える厨房を庫裏と言ったが、後に礼拝以外の雑事をする場所を言うようになった。

15.華束(ケソク)
小餅を積み飾って仏前に供える器具。六角の形で、甲立(コウタテ)という紙で作った華弁を回りに立てる。『考信録』に「実悟記に祥月に華束も内敷きもありとある。香立ては葉華をあらわし、供物は蓮台をあらわす」と示されているように、蓮如上人の頃には既に用いていた。供物の台は蓮台を甲立は蓮華をあらわす。華束はもと七五三の具。二個を一対と言わず一行というと同書(『考信録』)にあり。

16.華瓶(ケビョウ)と花瓶(カヒン)
華瓶とは四具足(火舎・燭台・華瓶一対)中の仏具で、口の小さい手のついていない物。樒または青木を挿す。
『真宗故事伝来抄』に「火舎華瓶は真言天台も専ら用いる、護摩壇の具足なり。異朝より伝えらた専らの法具」とあり。また「この仏具は仏家のみにあらず、岩清水の神前にも三具足あり。…蓮如上人以来とおぼゆるなり」と説示されている。
総じて仏教で樒を用いることは、日本の香木であること。インドでは専ら青蓮華を用いるが、この樒の葉の形が青蓮華に似ていることから用いる。樒の葉を葉と言わず華という。散華の時、作り花なきときは、樒の葉を用いることもあった。現在、花瓶は、六角型(御影堂型)と菖蒲型(阿弥陀堂型)とがある。
鶴亀の燭台は主として大谷派で用いているが、『考信録』に「元は世間の調度で、室町まで、祝言の床飾りであったと池坊の大巻にあり、今は仏具に限るようになった。唐にて道家の荘厳という説もあるが信じられず」とあり。余間等には本派でも用いている。

17.華鬘(ケマン)
仏前の戸帳の上部中央に添える装飾具。『大日経』に「数多くの華を集めて鬘となし以て仏に供養すべし」とある。その華鬘の遺物がインドアマラバー塔に、仏教美術の遺品として現存している。
しかし本来、華は花であり、鬘は首飾りで、聖尊奉仕者の装飾品。インドで行われたいた華鬘の風習が時代と共に種々変遷し日本に入り密教に用いる道場荘厳のいようなる華鬘を見るに至り、真宗の如く仏前斗帳の上部を飾る荘厳具となった。金で出来た華鬘と組み紐の華蔓とがある。

18.差定(サジョウ)
法要行事の次第を列記したもの

19.山号(サンゴウ)
寺院の別称。寺院の名称の上に更に山号を付けて○○山○○寺という。寺建立以前の地名や、寺の宗教的因縁を付けたものが多く、東大寺や興福寺のように古くは山号なし。西本願寺は、龍谷山本願寺という。東本願寺はなし。

20.宗名・浄土真宗(シュウメイ)
江戸時代、浄土真宗は、一向宗、門徒宗、本願寺宗など名称が一様ではなかった。安永3年、浄土真宗に統一すべく幕府の許可を得たが、浄土宗(増上寺)と宗名論争になる。明治5年真宗と公称することが認められる。

21.什物(ジュウモツ)
寺院所有の諸種の器具類を総称して什物という。また什器ともいう。什は十あるいは聚で、色々な物を包含する意味。『華厳経』に「供敬礼拝し四事供養し経書什物ことごとく以て奉上す」とあり、什物の語は、唐時代には広く民間にも用いられていたが、後世に至って寺院所有の器具を称する語となった。

22.巡讃(ジュンサン)
順次に和讃の巻頭句を巡読していくことを巡讃という。『御一代記聞書』に「順讃御おわすれあり」とあるが、この頃は和讃を前に置かず暗唱で一人で六種を調声した。第11代宗主顕如上人の頃より、今のような各人が順番に巻頭を読むが始まった。現在、本山またはご門主ご同席にて巡讃をするときは、巡讃資格取得者に限っている。

23.衆徒(シュト)
僧侶規程第五条に、「寺院及び法人教会に所属する僧侶の内で、住職及び主管者を除く他の者を衆徒という」。徒弟の義で、前記の僧侶を指していう。

24.新発意(シンボツイ)
「維摩経」に「新発意の菩薩」とあるように、初めは大菩提心を発っした菩薩をいったが、転じて、浄土真宗では、法嗣を新発意とよび、弱齢の小僧もシンボチと呼ぶ。

25.中啓(チュウケイ)
平安時代以降の朝服の名を束帯(正服を着ること)というが、その束帯の時夏冬共に檜扇を用いたことに由来する。中啓は正装時用い、他は夏扇を用いる。

26.手次(テツギ)
『考信録』に「手次は蓮師消息にも出で本山宗主の教化を取り次ぎする義」とある。所属寺を、菩提寺と言わずお手次寺という。

27.庭儀(テイギ)
庭上の儀式。大きな法要の時に、本堂以外の場所や庭上を行道する式をいう。

28.伝供(テング)
大きな法要の折り、仏祖前に供物を伝送する儀式をいう。仏祖前に縦列を作り、供物を順次手送りし所定の場所に供える。

29.戸帳(斗帳)(トチョウ)
仏殿に掛ける帳をいう。大派にては用いず。仏様用のカーテンで、夏冬を掛け分けたり、中陰中は、白物を用いたりする。
斗帳の文字が本当。その理由は、斗帳の形が覆斗(フトウ)に似たる故に斗帳の文字を用いる。中国の古書「逸雅」に「帳は帳なり。床上に帳施するなり。小帳を斗という。形は覆斗の如くなればなり」とある。その形、斗(マス)の覆いに似たるにより斗帳の字を用いる。『起世経』に「種種の斗帳、軒蓋を作りて周匝荘厳す」とあり。これは、インド・中国においておおいに用いられたもの。

30.お斎(トキ)
仏弟子の食事は正午を過ぎず一日一食と定められていた。これを斎という。正しい食事という意味で、斎は正、慎みという意味がある。報恩講等の法要の折り出す食事をお斎という。総じて、仏事に関する食事をお斎と言うようになった。

31.念珠(ネンジュ)
数珠、珠数ともいう。珠数は、蓮如上人御文章(2条目第5通)に珠数とあることによる。
念珠には、装束用数珠(黒白の二輪念珠)と、布教用数珠(房なしの二輪念珠)と略念珠(一輪念珠)がある。装束用念珠は、房の結び目が隠れている切房を用いる。元は数を数える法具で、『考信録』に、祖師及び宗主の真像、皆珠数をくる相に描く。実悟記に「実如上人仰せそうろうしは、珠数はただもとぬものなり、くるべし。蓮如上人も、御持候時は、御繰り候ぞかしと」。しかし今はくることを廃し、時節にしたがうべし。
ーとあり。
108個の珠は108の煩悩(大智度論にあり)に由来するとも言われる。

32.度牒(ドチョウ)
僧尼得度の公式なしるし。令制では告牒といい、延喜式では度縁という。出家の免許状のこと。

33.仏飯器(ブッパンキ)
これは火舎花瓶にそいたるもの。諸宗一統に用いる。四具足の場合は一対、三具足は一つ。祖師よりそのほかは一服。
阿弥陀如来に供える御飯を「仏飯」といい、他を「供飯」(クハン)という。通常、朝供え午前中に下げる(下供・ゲグという)。本山御影堂のご真影の供飯を「御影倶」といい、この御影倶を門主がお供えする事を「御真倶」という。
本山・阿弥陀堂の仏飯は、一対で約6合、御影堂の倶飯は約1升3合、元日やご正忌には、特大の仏飯器に約2升盛り上げる。

34.仏壇(ブツダン)
天武天皇、白鳳14年詔(ミコトノリ)「諸国家毎に仏舎を設け、仏像及び経文を安置し持て三宝を供養すべし」(日本書紀)に起因し、仏像を安置する清浄な場所として、床の間が出来た。しかし広く普及するに至らなかった。一般に普及したのは、徳川時代に至り、悉く仏教各宗に所属させ仏壇を設けさせたことによる。

35.法名(ホウミョウ)
法名とは出家して仏法に帰依したことを表す名字であり、法号ともいう。僧侶は得度式を受けた者に対して、門信徒は帰敬式を受けた者に対して御門主より授けられる。
法名の言葉の起源は定かでないが、元照律師「観経疏」巻下に「阿弥陀仏昔(中略)国を棄てて家を出て、法名を法蔵と号し」とあるが、その頃より法名と名乗っていたことが知られる。
浄土真宗では「釈」の文字を冠すが、これは「釈迦」の略称であり、仏の「姓」であり、釈迦牟尼仏の教えに帰して、仏弟子になったことを表す。中国(東晋時代)の道安法師が、僧侶は皆等しく「釈」をもって姓とすべしと称えたことに始まる。後に『増一阿含経』が伝来し、お経の中に「四河は海に入りて本の名字なく、沙門釈迦子と称すべし」と説かれてあり、ここに皆は道安を称讃し「釈」を用いるようになった。現在でも韓国等の僧侶で、「釈」を用いている人もある。

36.坊守(ボウモリ)
「考信録」に「法然上人玉日の御方を御覧じて存細なき坊守なりと仰せそめしより以来、一向真宗の一道場の家主をば、坊守と申伝えたり」とある。お寺を守り調える人という意味。宗法第26条4項に「住職の妻及び住職であった者の妻またはその生活配偶者で、坊守式を受け、宗務書備付台帳に登録された者を坊守という」とある。

37.本尊(ホンゾン)
真向の弥陀の尊像
観経住立空中尊・真向尊形は浄土真宗のみ。(他宗は来迎、右に向かうは来迎仏、左に向かうは、引接仏・拝者の左右)
『真宗故実伝来抄』に「覚如上人の時、出雲地の乗専の願いによって、初めて真向本尊を免ぜるといわれるがしからず。寺町の阿弥陀寺に源空上人安置の画像(真向の身形)があり、左方下角に光明をよけて、沙門源空と御名御判があり、この寺に、本願寺流の真向の本尊はこれを写したまう云々」とある。
絵像本尊
『真宗帯佩記』に「御門葉へは覚如上人の時より始まる。裏書きに方便法身の尊形と法語の聞き書き」とあり。
仏像の光明串後光と船後光
『真宗帯佩記』に「当流は串後光を用いる。浄土論に仏の身業功徳を説いて「相好光一尋」とあり、相好光一尋の相をかたどる」とあり。

38.三具足(ミツグソク)・四具足(シグソク)
香・華・灯の供養はインドで行われ、日本では平安時代、香は火舎、灯は燈台を用い、花は華瓶に挿した。中国三具足形式による荘厳は、1338年編集の「百丈清儀」(ヒャクジョウシンギ)に見え、鎌倉末期に禅と共に日本に伝わった。室町時代には、華道の勃興にともなって書院の床飾りに取り入れられ、禅宗以外の宗派でも仏前の荘厳具として用いれられるようになった。
四具足は上卓上の仏具であるが、火舎・華瓶は、もと天台・真言の護摩壇の道具であったものを寂如上人が、当家の仏具として転用。火舎は火舎香炉ともいい、言葉が重複するので火舎という。この四具足で、地・水・火・風の四大を表すとも言われる。

39.門主(モンシュ)
門跡寺院の住職を門主という。現在本願寺派においては宗主のこと。宗法「門主は、法統を伝承し、この宗門を統一し、宗務を統裁する」(第六条)とあり、また「門主は、本願寺住職があたる」(第七条)とある。
また猊下ともいうが、猊下とは、猊は獅子の1種で、猊座は獅子座ということであり、仏菩薩の座する座をいう。転じて高僧を尊称するときに獅子座の下で禮するという意味で、門主に限った言葉ではなく、他の高僧にも通じる。

40.輪灯(リントウ)
「輪灯は、全く仏具。其の始めを知らず」と『故実』にあり。輪灯は早くから中国でも用いられていたが、日本では、紫辰殿の用具として使用されていた。後代になって仏前専用になるに至る。現在では浄土真宗のみ使用している。
本山御影堂(牡丹蔓)、阿弥陀堂(菊蔓)、お東(丸蔓)、仏光寺(藤蔓)使用。

41.摩尼珠(マニシュ)
 蓮台の華と華の間にある金の珠。本山、築地本願寺の本尊などにある。ちなみに蓮台は本山は青蓮華、本廟は、白蓮華、一般金蓮、絵像は青蓮華。


42.法具・仏具の読み方・数え方

● 本尊(ほんぞん)・御影(ごえい)
【木像】(もくぞう)  【壱?】(阿弥陀如来)
【絵像】(えぞう)   【壱幅】(阿弥陀如来)
【名号】(名号) 【壱幅】(六字・九字・十字名号)
【御影】(ごえい)【壱幅】(親鸞聖人・七高僧など)【絵伝】(えでん)   【壱幅】

● 法物(ほうもつ)礼拝の対象に付属するもの【宮殿】(くうでん)    【壱宇】
【須彌壇】(しゅみだん)  【壱基】
【厨子】(ずし)     【壱基】
【上卓】(うわじょく)   【壱面】
【前卓】(まえじょく)   【壱面】
【三具足】(みつぐそく)  【壱組】(壱段ともいう)【四具足】(しぐそく)   【壱組】(壱段ともいう)
【五具足】(ごぐそく)   【壱組】(壱段ともいう)【礼盤】(らいばん)   【壱組】
【常香盤】(じょうこうばん) 【壱基】
【螺灯】(さざえ)    【壱対】
【輪灯】(りんとう)   【壱対】
【金灯籠】(かなどうろ) 【壱対】
【菊灯】(きくとう)    【壱対】
【瓔珞】(ようらく)    【壱対】
【仏天蓋】(ぶってんがい) 【壱張】
【人天蓋】(にんてんがい) 【壱張】
【金華鬘】(かねけまん)  【壱枚】
【柄香炉】(えごうろ)  【壱個】(壱本ともいう)【塗香器】(ずこうき)  【壱個】(壱器とみう)
【翠簾】(みす)     【壱枚】

● 打敷・戸帳・法衣類」

【戸帳】(とちょう) 【壱枚】
【糸華鬘】(いとけまん) 【壱枚】
【揚巻】(あげまき) 【壱本】
【打ち敷き】(うちしき) 【壱枚】
【水引】(むずひき) 【壱枚】
【袈裟】(けさ) 【壱領】(輪袈裟も)
【衣】(ころも) 【壱領】(色衣・黒衣)
【切袴】(きりばかま) 【壱領】
【修多羅】(しゅたら) 【壱枚】

● 什物類・その他

【仏飯器】(ぶっぱんき) 【壱個】
【仏飯台】(ぶっぱんだい) 【壱台】
【和讃卓】(わさんじょく) 【壱面】
【経卓】(きょうじょく) 【壱面】
【香卓】(こうじょく)  【壱面】
【焼香卓】(しょうこうじょく)  【壱面】
【御伝鈔卓】(ごでんしょうじょく)【壱面】
【州浜卓】(すはまじょく) 【壱面】
【据箱】(すえばこ) 【壱個】
【菱灯籠】(ひしどうろ) 【壱対】
【柱懸灯籠】(はしらかけどうろ)【壱対】
【立経台】(りっきょうだい) 【壱基】
【香盒】 (こうごう) 【壱個】
【供笥】(くげ) 【壱対】(壱行ともいう)
【雲脚】(うんきょく) 【壱対】
【段盛】(だんもり) 【壱対】
【鏡餅台】(かがっもちだい) 【壱対】
【華籠】(けろう) 【壱枚】
【梵鐘】(ぼんしょう) 【壱口】(壱建ともいう)
【喚鐘】(かんしょう) 【壱口】(壱建ともいう)
【雲版】(うんぱん) 【壱枚】
【?】(きん) 【壱枚】(大・小・引)
【沙鑼】(さわり) 【壱枚】
【太鼓】(たいこ) 【壱面】(経切太鼓・楽太鼓)
【鞨鼓】(かっこ) 【壱面】
【鉦鼓】(しょうこ) 【壱基】
【御文章箱】(ごぶんしょうばこ)【壱個】

● 教典・聖経類

【校点三部経】(こうてんさんぶきょう)【壱部】
【三帖和讃】(さんじょうわさん)【壱部】
【経本】(きょうぼん) 【壱部】
【聖教】(しょうぎょう) 【壱部】
【御消息】(ごしょうそく) 【壱通】

● その他
【浅沓】(あさぐつ) 【壱足】
【薄縁】(うすべり) 【壱枚】(壱畳ともいう)
【円座】(えんざ) 【壱枚】(壱畳ともいう)
【中啓】(ちゅうけい) 【壱本】
【念珠】(ねんじゅ) 【壱連】(壱具ともいう)
【曲禄】(きょくろう) 【壱脚】
【蝋燭】(ろうそく) 【壱丁】(壱本ともいう)
【供華】(くげ)     【壱杯】(壱瓶ともいう)
【供物】(くもつ)        【壱具】
【磬】(けい)         【壱枚】
【節柝】(せったく) 【壱組】
【香炉】(こうろ) 【壱基】(壱個ともいう)
【夏扇】(なつおうぎ) 【壱本】
【鐃】(にょう) 【壱枚】
【?】(はち) 【壱組】
【香】(こう) 【壱斤】(沈香などは壱両目という)
【線香】(せんこう) 【壱束】
【膝付】(ひざつき) 【壱枚】(壱畳ともいう)
【法名軸】(ほうみょうじく)【壱幅】(壱軸・壱対)
【らん間】(らんま) 【壱面】