経口によらない栄養法



経口によらない
栄養法には、「中心静脈栄養法」と「経腸栄養法」の2種類があります。

<中心静脈栄養法>


 中心静脈栄養法とは
たとえば鎖骨下静脈などから心臓に最も近い大静脈までカテーテルを入れて輸液ライン(IVH)を確保し、このラインを通して栄養補給する方法。
輸液ラインを常に留置しておくことで、点滴のたびに静脈に針を刺さなくてすみます。

何らかの疾患で消化管を通しての栄養摂取ができない患者や、消化管を休める必要のある患者に施行されます。


 利点
中心静脈栄養法は、従来の末梢静脈栄養に対する呼び方です。

末梢静脈では、高濃度のブドウ糖やアミノ酸の溶液を注入すると、その浸透圧の高さから末梢静脈炎を起こすために、一日に必要な充分量の栄養を入れることができませんでした。
これに対し、中心静脈では心臓に最も近い太い静脈であるため、高濃度の溶液でもすぐに希釈されるため問題になりません。これで、1日に必要とする完全な栄養やカロリーを入れることが可能になりました。
このため、中心静脈栄養法を「高カロリー輸液療法」ともいいます。


 注意点
中心静脈に通じるラインのため、細菌感染に対する注意が必要です。輸液の混合調製は、クリーンベンチを用いた無菌的操作で行われます。

 輸液の成分

1.糖質

主にブドウ糖が用いられています。その他に、フルクトースやキシリトールが併用されている製剤もあります。
これら糖質はカロリー源であり、1gあたり約4kcalのエネルギーとなります。

糖質は、TCA回路という反応ルートに入ってエネルギー源のATPを作り出しますが、この反応がスムーズに進むためには、ビタミンB1が欠かせません。
もしビタミンB1が不足すると、糖質はTCA回路に入らずに、反応が脇道に逸れ、乳酸を産生する方向へ傾いてしまいます。このため乳酸によるアシドーシスが進み、ウエルニッケ脳症を引き起こした例がありました。
IVH輸液施行時は、ビタミンB1を必ず入れるようにと、1997年に、緊急安全情報が流されました。


2.脂質

脂肪は水に溶けないため、浸透圧を呈しません。よって高張にならないため末梢静脈から入れることも可能です。

大豆油を20%含み、乳化剤として卵黄レシチンが用いられた製剤が一般的です。

IVHラインでは、細菌や微粒子、気泡の侵入を防ぐため、フィルターが付けられています。脂肪乳剤はこのフィルターの目詰まりを起こすため、他の成分とは別のルートで入れられます。

カロリー源(1gあたり9kcal)として、あるいは必須脂肪酸の補給源として利用されます。


3.アミノ酸

高分子であるタンパク質を静注するとアナフィラキシ−ショックを起こす恐れがあるため、アミノ酸の形で入れられます。
必須アミノ酸だけでなく、非必須アミノ酸も輸液には必要のようです。

アミノ酸は、体内でエネルギーを使ってタンパク質へと合成されます。
よって、この合成がスムーズに進むためには、エネルギー源としての脂質や糖質が必要です。
もし脂質や糖質が足りないと、生体は、タンパク質を分解してエネルギー源として利用してしまいます。
これら糖質や脂質からのエネルギー(Non Protein Cal)とアミノ酸の窒素の比率(NPCal/N) は、150〜200が適当とされています。

腎不全、肝不全時には、特定のアミノ酸の不足や蓄積が生じるため、病態によってアミノ酸の種類は選ばれます。


4.ビタミン

輸液にビタミンは必須ですが、上述したように、特にビタミンB1の欠乏には注意が必要です。


5.微量元素

身体にとって、微量元素は必要です。これら微量元素は、通常の食事を摂っていれば問題なく摂取できますが、輸液栄養の場合は、輸液の中に入れられていなければ摂取できません。
高カロリー輸液では、鉄・マンガン・亜鉛・銅・ヨウ素の含まれた微量元素の製剤がありますが、これら以外にも 必要な微量元素があるため、欠乏症に対する注意が必要です。

6.電解質

ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウムイオンなどが含まれます。
体液バランスを保つ上で大切ですが、こうした電解質も 病態によって量が調整されます。


<経腸栄養法>

 経腸栄養法とは
鼻腔から、胃や十二指腸までチューブを通し、その管を使って栄養補給する方法。
腹壁から胃へのルート(胃ろう)を設けることもあります。

経口摂取はできないが、消化管の機能は保たれている患者に施行されます。
経静脈栄養とは違って、腸を経由して栄養が吸収されるため、経腸栄養法と呼ばれています。

 利点
中心静脈栄養法では、栄養の吸収に腸を経由しないために腸粘膜の絨毛が萎縮し、細菌や毒素が体内に入り込みやすい状態になる欠点がありました。
経腸栄養法では腸を使用するため、腸の萎縮を防ぎ、防御機能を維持できる利点があります。


また、チューブが細菌に汚染されると下痢などを起こしてしまいますが、それでも中心静脈栄養法ほど厳密な無菌操作を必要とはしません。そういった意味で、より安全性の高い方法だと思います。
  栄養剤の成分
多くの製剤が、1kcal/ml になるよう、調製されています。
また浸透圧が高すぎると、腸管内への水分誘導が起き下痢をしやすくなるため、濃度も設定されています。
チューブに通すため、液状になっていますが、用時溶かす粉末タイプのものもあります。

1日に必要な水分やカロリー、栄養を補給するには、約1500〜2000ml もの量が必要です。通常ほぼ1日かけて少しずつ注入しなくてはいけません。注入速度が速すぎても下痢をします。
ビタミンが壊れるため、50℃以上の加熱はできません。また細菌感染を防ぐため、残った時は冷所保存するなどの注意が必要です。

経腸栄養剤は、成分の形態から、「半消化態栄養剤」と「成分栄養剤」に分けることができます。
「半消化態栄養剤」は、分子量がやや大きく、消化(吸収される形にまで低分子化)される過程を少し必要とします。
これに対し、「成分栄養剤」は、栄養素がほぼ基本単位まで分解されていて消化をほとんど必要としません。この成分栄養剤は脂肪含有量が少ない組成になっています。

本文に出てくるエンシュア・リキッドは、半消化態栄養剤ですが、その主な成分を以下に示します。
糖質・・・・・・・・デキストリン、精製白糖
脂質・・・・・・・・トウモロコシ油、大豆リン脂質
タンパク質・・・カゼイン、大豆タンパク質
ビタミン・・・・・A,D,E,K,C,B1,B2,B6,B12,,葉酸,ニコチン酸アミド,パントテン酸,ビオチン
電解質・・・・・Na,Mg,K,P,Cl,Ca
微量元素・・・Zn,Fe,Cu,Mn 

エンシュアリキッドは、イチゴ味、コーヒー味などの香り付けがされていて、経口摂取も可能です。
私もコーヒー味のものを飲んでみましたが、ミルクがたくさん入ったコーヒーのような味でした(正直、あまり美味しいとはいえない・・(^_^;)。


(H 13.01.30)

<参考文献>
「日本薬剤師会雑誌」 平成9年6月号  p.19−28
「治療薬マニュアル」医学書院
「調剤と情報 」2000年 9月号 じほう  p.29-33


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